「風の街みやびら」は、社会福祉法人東城有栖会が運営する高齢者福祉施設だ。1981年に建設された特別養護老人ホーム「東寿園」を建て替え・増築したものであり、使い勝手のよい施設にするため有志の職員が設計の構想を提案書にまとめ、プロポーザル形式で業者を選定したという。提案書には木造平屋を希望する旨と、10の個室がキッチンや事務室を囲むユニットのイメージが盛り込まれた。
その提案書をもとにCAnと大建metチームは、小さな個室の集合を「コ・ユニット」と名付け、コ・ユニット3つでひとつのユニット、そのユニットふたつでひとつの棟とする単位を基準に全体を構成。設計・施工を任されることになった。
入居者の個室は、2,730mm四方の奥の間(寝室)と、2,730mm×1,820mmの「あだの間」の2室からなる。「あだの間」とは外の間あるいは横の間という意味の空間で、この地方の伝統的な住宅に見られるものだ。このスペースがあるおかげで、居住者は来訪者と寝室で対面することなく、住居でいうリビングのように使うことができる。
3室で構成されるコ・ユニットは、「茶の間」と名付けられた空間を囲むように配置されており、さらにコ・ユニットが3つ集まった中央部には「リビング」と名付けられた大きな空間へと繋がっていく。
「風の街みやびら」は寝室から共有のリビングまで、つまりプライベートな空間から公共へ、場の属性を段階的に連続させていくことにより、個人の住居が集まる街のような風景をつくりだしている。
SE施工
セブン工業株式会社 / http://www.seven-gr.co.jp/