高知市を主な拠点とする株式会社建匠は、主に新築住宅を手掛ける建築会社だ。建匠はメディア発信を重視しており、YouTubeチャンネルやテレビ番組枠を持っているため県下での認知度は極めて高い。そのため、新社屋もひとつのメディアとして戦略的に設計されている。
まず立地。高知市は津波被災リスクが大きいことが指摘されているため、たとえ災害に見舞われても事業が継続できる点を一番に考え、国道56号線に面した場所が選ばれた。前面道路は交通量も多く、アクセスも良い。朝は渋滞することもあるというが、それは社屋が認知されやすいチャンスでもあった。
次にデザイン。新社屋の建築面積は200㎡、SE構法の木造3階建てだ。サイズは大きくはないがデザインが特徴的で、各階ごとに意匠を区切らず、3層まとめた直方体に大きな庇をかけてひと塊に見せ、実際は10m強である高さを一層大きく見せている。また2階部分のガラスにはデジタルサイネージを投影し、自社広告のほか地域になじみのあるよさこい祭の様子を放映している。
最後に間取りだ。平面図の中心に階段とエレベーターシャフトを納めたセンターコア形式で、事業計画の変化によって間取りの変更が生じても対応できるようになっている。これは新社屋の東側に4棟並んだモデルハウスのように、”モデルオフィス”として働く環境の提案の役割もある。自社の強みを連動させた広告塔として成功しているのではないだろうか。