SE構法の温浴施設の事例紹介「おふろcafeかりんの湯」
温浴施設は地域で求められる施設でもあり、長時間過ごす空間でもありますので、愛着を感じやすい木造建築は適していると言えます。
高品質で低コスト、短工期が求められる教会を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。
このコラムでは木造の構造躯体にSE構法を採用した温浴施設の事例紹介をしながら、意匠計画やSE構法の構造設計等のポイントについてお伝えします。
<このコラムでわかること>
・温浴施設を大規模木造(SE構法)で実現する時代
・SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の概要
・SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の意匠設計
・SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の構造設計
・温浴施設に大規模木造(SE構法)が適している理由
・SE構法へのお問合せ、ご相談について
・まとめ
温浴施設を大規模木造(SE構法)で実現する時代
温浴施設においては、SE構法の構造スペックをうまく活用することで、木造では実現が難しい大空間や大開口がある建築を実現することができます。
発注者のSDGsや脱炭素社会に貢献できる建築を作りたいという意向も強まっており、商業施設に木造(SE構法)が採用される事例が増えています。
関連記事:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由
温室効果ガス排出量実質ゼロや地域の活性化に向けて、建築界にできることの一つに大規模木造の提案があります。木造は建築時に炭素排出が少なく、木は炭素を固定し貯蔵する特性があります。
関連記事:脱炭素・カーボンニュートラルで木造化・木質化が注目される理由
脱炭素社会実現に向けて、大規模木造の普及は推進する要素になります。
持続可能な木材利用を経営戦略に上手に取り組む企業が増えており、自社の事業用の建築物を木造で計画する企業も増えています。
関連記事:木造化が必須な時代に!発注者向け大規模木造のメリット解説
SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の概要
「おふろcafeかりんの湯」は、千葉県香取市に建てられた温浴施設です。
「おふろcafeかりんの湯」は、「農園リゾート THE FARM」に隣接する温浴施設で、ともに株式会社ザファームが経営しています。
「農園リゾート THE FARM」は完全管理型体験農園となっており、貸農園、温浴施設、グランピングやコテージなどの宿泊施設、飲食などを複合させ、滞在型の農園リゾートとして展開されています。
「おふろcafe」とは、温浴施設に入る前後を過ごす空間です。入浴の前後の時間の充実を図ることで温泉体験をより魅力的なものにし、そこでの滞在時間が生み出す収益が温泉経営を助けるというビジネスモデルとなっています。
温浴施設の空間のスケールなどから、これまでは鉄骨造やRC造、大断面集成材でしかなし得なかった木造架構の領域を、SE構法が切り拓いた木造建築です。
<「おふろcafeかりんの湯」の概要>
・用途:公衆浴場
・構造:木造(SE構法)
・階数:2階建て
・延床面積:496.26㎡
SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の意匠設計
「おふろcafeかりんの湯」は、敷地南側の県道と駐車場に面して建ち、そちら側からアクセスする配置計画となっています。
平面計画は南側中央部にアプローチを設け、その右手に風除室を介してエントランス、受付を経てロビーとリラックススペース1へと導かれる構成になっています。
リラックススペース1を北へ抜けていくと隣接する浴場に至ります。
建物中央部には中庭を設け、農園ガーデンと足湯を配しています。
その中庭を回るように、リラックススペース2、キッズルーム、サウナリラックスを通ってふわふわドームという子ども専用の大型トランポリンが設置されたサウナガーデンに至ります。
矩形平面にふたつの中庭を設け、それらを常に意識しながら一筆書きのように歩いてめぐる経験が設計されています。
この木造の温浴施設の意匠設計のポイントは下記です。
・暖炉やツリーハウス、あちこちに置かれたソファや畳スペース、そして壁面には全面に本棚やこもって読書ができる「ヒトシェルフ」と呼ばれるアルコーブがあります。
・ふわふわドームに正対してサウナが設けられています。親がサウナを楽しんでいるときも、その遊具で遊んでいる子どもたちの姿が見られるように、サウナの壁面をガラスにしています。ガラスを介しつつも視覚的に一体感のある空間設計です。
関連記事:耐震構法SE構法のプランニングがうまくいく設計の考え方を徹底解説
SE構法の温浴施設「おふろcafeかりんの湯」の構造設計
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。
SE構法であれば、温浴施設で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。
SE構法は、許容応力度計算に加えて偏心率のバランスを考慮した構造設計を行なっておりますので、外壁(耐力壁)の位置も意匠のデザインに合わせて決定することができます。
SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。
今回の温浴施設におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。
1.SE構法の構造スペックで実現した開閉式のテント膜屋根
サウナガーデンには開閉式のテント膜屋根が備えられています。
単なる日除け機能だけでなく、雨天時の排水を可能にするためには、降雨時にテント面がたわまないように張力を入れる必要があります。
そこでサウナガーデン四周の構面を強化し、外廊下部分の柱には150mm×150mmの特注材を用いています。
主体構造と一体化した木造架構による13,650mm×10,010mmスパンの開閉式テント膜屋根支持は類例がなく、SE構法でなければ実現困難です。
2.SE構法で実現する大空間と大開口
この温浴施設は19,110mm×38,220mmの矩形平面となっており、SE構法の構造スペックを活かして、矩形平面のなかに多様な空間を持つ建築を実現しています。
5,460mmスパンを主とした空間に場をつくり込んでいますので、空間の広がりが感じられる設計となっています。
居室部分に耐力壁をまとめて配置して耐震性を確保することで、2つの中庭に面した部分には大開口を実現しています。
建築全体として温浴施設の開放的な空間を実現すべく、SE構法の構造スペックを活かした空間構成となっています。
この木造建築は基本的には住宅スケールで使用する構造用集成材の規格材を基本に構造躯体を成立させています。
SE構法は、許容応力度計算に基づく構造計算を全棟実施しておりますので、設計内容に応じた構造設計が可能です。
関連記事:中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計
温浴施設に大規模木造(SE構法)が適している理由
大規模木造(SE構法)が温浴施設に適している理由は下記です。
1.耐火建築物・準耐火建築物に対応しやすい
木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。
階数や規模により建築基準法で「耐火建築物」とすることが求められることがあります。「木造耐火」の仕様を満たす必要がありますが、木造(SE構法)でも「耐火建築物」の対応は可能です。
関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ
関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ
2.木造はSDGsや脱炭素社会、ESG投資に対応しやすい
SDGsの急激な浸透もあり、カーボンニュートラルな社会への転換は世界の共通課題です。脱炭素社会実現のための課題解決に向けた取り組みが、これからの施設建設にも求められています。脱炭素社会に向けて、施設の木造化・木質化は推進する要素の一つになります。
木造は建築時に炭素排出が少なく、木は炭素を固定し貯蔵する特性があるなど、「地球環境に優しい工法」として注目されています。
近年、「環境社会、企業統治の要素を考慮する(ESG投資)」が強く意識されるようになりました。
民間で建設する建築物で木造化、木質化を図ることは、こうした流れを加速させるものとして評価されていくことが予想されます。木造化・木質化には、地球温暖化防止と持続可能な森林経営の下支えという二重の意味を持ちます。
関連記事:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由
3.木造は建設コストが安い
木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の構造より建設コストが安く、事業者もしくはテナント契約者の双方にコストメリットが働く可能性もあります。
木造と鉄骨造で使用する建材を部材ごとに比較しても、規格寸法があるアルミサッシなど、ほとんどの建材が木造のほうが安くなります。
基礎の断面寸法が鉄骨造と比較してとても小さいことから、基礎工事の材料費、施工費、残土処分費なども大幅に軽減できます。建物重量がとても軽くなることから、地盤改良コストも抑えることができます。
設計に関しては、木造のモジュールを意識した設計とすることで、材料の歩留まりがよくなり、施工手間が軽減されることで、結果として建設コストが安くなります。
関連記事:【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(前編)
関連記事:【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(後編)
SE構法へのお問合せ、ご相談について
大規模木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。
1.構造設計
SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。
2.概算見積り
SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。
3.調達
物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。
4.加工
構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。
5.施工
SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)
↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。
https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/
まとめ
脱炭素社会、ESG投資への対応が求められる時代になり、非住宅用途の建築物を木造で建設することが求められています。
温浴施設のような用途の建築においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。
SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。
計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。