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考察 強い家をつくる

【考察 強い家をつくる vol.2】
失敗しない家づくりの依頼先選び
~建築士法改正による設計図書の保存義務〜

2020年3月1日より建築士法が一部改正され、設計図書の保存義務について、期間と内容が大きく変更されました。今回は、「この改正が住宅建築業界においてどのような影響があるのか」を将来的な予測も含めて解説したいと思います。

設計図書の保存義務

「設計図書の保存義務」とありますが、設計士だけでなく建て主側にとっても重要な内容です。専門的ではありますが、少し耳を傾けていただければと思います。
改正された保存期間については、これまでの5年から15年と期間が長くなりました。しかし、これは単純に保存の方法や体制をどうするかということですので、電子化が進んでいる現在ではそれほど大きな問題ではないであろうと思われます。
一方、もうひとつの改正項目である「設計図書の内容」については、今後大きな影響がありそうです。
保存義務が生じるのは以下の項目です。

配置図、各階平面図、二面以上の立面図、二面以上の断面図、基礎伏図、

各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書等、工事監理報告書

これらの中で、最大のポイントは「構造計算書」ではないでしょうか。特に、「4号建築」においては大きな影響があると想像できます。

「4号建築」の特例

木造建築においては以下の基準を全て満たせば「4号建築」となるという特例があります。

・2階建て以下

・延べ床面積500㎡以下

・高さ13m以下

・軒の高さ9m以下

この「4号建築」における特例の最大の特徴は「構造計算書の提出義務がない」という事です。建築基準法の上では、全ての建築物の安全性を確認するためには「構造計算書」の提出が確認申請時に必要になります。
しかし、

この「4号建築」においては、確認申請機関に「構造計算書」を提出しなくても申請が受理される

ということです。これによって、『ほとんどの木造住宅は構造計算をしていない』という現実が生じています。ここで大きな勘違いをしている方が非常に多いのですが、

「構造計算書」は、あくまでも「提出の義務がない」というだけで、「構造計算をしなくてもよい」ということではありません。

建築基準法を読んでも「提出を省略してもよい」とは書いてありますが、「やらなくてよい」とは決して書いてありません。これを踏まえて、今回の建築士法の改正が木造住宅業界にどういう影響を与えていくのかを考えてみます。

建築士法の改正による影響

この地震国の日本において、鉄骨造やRC造などの4号建築以外の一般建築物は、ロジカルな「構造計算」によって建物の安全性を立証しています。その過程では、意匠設計を担当する設計士とは別に、構造設計を専門とする構造設計士がそれを担当しています。

しかし、2階建て以下の木造住宅の多くは、意匠設計を担当する設計士が構造の安全性についても兼任しています。そこではロジカルな構造計算は行われずに、46条の壁量規定に基づいた、意匠設計士の「勘と経験」による安全性の確認が行われていることがほとんどです。制度的にそれでも確認申請が通るので違法ではないのですが、この現状に大きな疑問を持つ建築の専門家は非常に多いのです。

以前から問題視され続けているこの現状がなかなか変わらない理由は、家を設計する側(設計士や工務店)も、チェックする側(確認申請機関)も、それに対応する体制が整っていないということが非常に大きいです。
この現状の中、国としてもいきなり「4号特例を廃止する」という判断は現実難しいであろうことは想像がつきます。
しかし国が、地震国日本の木造建築がずっとこのままでよいと考えているはずはありません。近い将来、徐々にその流れに進むであろうことは、しごく当然のことなのです。

そこで、今回の建築士法の改正です。
この保存書類に「構造計算書」が明記されているということは、

「確認申請に提出はしなくてもよいけれど、しっかりと保存はしてください」

という意味です。つまり、「構造計算」をしているということが前提の流れになっています。
現状の「構造計算書の提出義務はない」から、いきなり「構造計算書の提出を義務付ける」となると大きな混乱が生じるので、
将来的なその実現のために、「保存の義務」をまずワンクッションとして設定したと考えるのは当然です。

まとめ

現在、4号建築において構造計算を行っていない設計者や工務店は、

この将来的な流れに備えて今からどう準備をしていくか

が非常に大きなテーマになると思います。
断熱・省エネにおいては、何年も前からそういう流れになっています。
いきなり義務化にならないけれど、段階的に省エネ基準を設け、長期優良住宅や認定低炭素住宅、BELS、トップランナー基準などの体制を整備しながら、確実に義務化の流れに進んでいます。いつ大地震がきてもおかしくないこの日本において、住宅の構造性能は人命にかかわる非常に重要なテーマです。

「SE構法」は1997年の誕生以来、全ての建築物において構造計算を行ってきました。当時は、2階建て以下の木造住宅では本来必要ではない構造計算を行っていることに、周りからの「過剰ではないか」という声も聞こえてきましたが、その必要性を強く感じてやり続けてきました。
この「SE構法」が取り組み続けてきた「木造建築の本来のあるべき姿」に、時代がようやく追いつきつつあるのかも知れません。

後藤俊二

住宅コンサルタント

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