兵庫県神戸市に建つ浄土真宗本願寺派の寺院、徳善寺。1952年に創建し、初代が建てた本堂と庫裏は1995年の阪神・淡路大震災にて全焼、2代目住職がすぐに再建したという歴史がある。
現在3代目の住職は、2011年地震に強いRC造の納骨堂を建立。それは故郷の墓を維持することが困難になった地域の人が増え、墓じまいを経て納骨堂へ遺骨を安置したいという要望に応えたためだ。
以前の本堂と庫裏(くり)は、震災後の突貫工事が遠因で温熱環境や間取りに問題があった。そこで今回、既存の納骨堂と接続する木造3階建ての建築計画が浮上した。設計施工を担当した伊田工務店は、震災の経験を経て特に耐震性能を重視しているため、本件に最適な工務店だった。
新しい徳善寺の1階は住職家族の生活空間である庫裏、2階は庫裏を通らず行ける本堂、3階は納骨堂だ。2階の本堂は、格式ある仏事を行えるよう内陣の両脇には余間を設置。渡り廊下によってRC造の納骨堂と接続する。内陣と外陣の間には結界を形成する欄間や柱をあえてなくし、その豪華さによって格をはかられることがないよう精神的価値に重きを置いた。
一見住宅のような徳善寺は、人口が集中する都市部にて、墓参りという歴史的風習を守っていくための一つの完成形だ。戦後、都市部の寺院は不燃化と土地問題を背景にRC造で建てられることが多くなったが、堅牢でぬくもりある木質空間を建築できるいま、このようなケースは増えていくだろう。
設計・施工
株式会社伊田工務店 / https://www.idahomes.co.jp