建主のKさん(夫)は広島県三原市の出身。妻と3人の子どもと神奈川県横浜市に住んでいたが、東日本大震災がきっかけとなり、家族で地元へ移住することになった。新しい家は実家の近くで、山あいに田畑が広がる地域だ。
設計を担当したのはバウムスタイルアーキテクト。Kさんの妻が愛読している『モダンリビング』誌の事例を見て、連絡したのがきっかけとなり、プライバシーを確保しながら広がる森林の眺望を楽しめる平屋を計画することとなった。
敷地は北と東の二面が道路に接しているため、玄関のある北側には1.5mの擁壁を立て、東側は庭に。どちらにも植栽を設けることで外部からの視線を抑制。玄関と廊下から北側にむかって主寝室や個室などの個別空間を、南側にはLDKと水回り、ウッドデッキを配した。
LDKには柱が1本もなく、三方の窓が周囲に開かれていることにより、外部と連続した広がりを感じることができる。リビングはダイニングと連続しているが、床レベルを下げ、鉄平石を貼ることで別空間と意識させ、薪ストーブが似合うデザインにもなった。
ウッドデッキの片隅には夫が手作りしたピザ窯が置かれ、親戚が集まって料理を楽しむなど第二のリビングとしても使われている。K邸の外部につながるゆったりとした開口と、土地の広さを生かした空間計画は、SE構法の架構あってこそ。第2のスタートを切った暮らしの舞台にふさわしい住まいとなった。