東京渋谷区のコンパクトな土地に建つ木造3階建て。この住宅は建て主であって大手建設会社の設計者である夫と、建築・不動産系のコンサルティング会社に勤務する妻、そして夫の学生時代の友人というメンバーで設計された。
設計のプロフェッショナルである夫妻があえて共同設計者を迎えたのは、プライベートな領域である住宅に客観的な視点を持ちこむ目的があった。ディスカッションを重ねることで、多くの可能性を検討するためである。
1階はピロティと土間玄関、WICから成る。将来は部屋に改装することも視野に入れて多様な用途の可能性を残した。1階は居室を設けていなので階高は抑えられており、2階はLDKでダイニング上部は吹抜けとした。LDKの一体感を保持するため、リビングとダイニングの間に位置する階段はささらを鋼製にすることで寸法を抑え、圧迫感を減らすことに成功している。
3階は南側に浴室、北側に寝室を配置した。3階頂部にはトップライトを設け、2階へも十分な光を確保した。写真を見て分かるように、本宅のところどころには木材、鋼材の構造材が現わされているが、色味やディテールが細やかに調整され、全体的にリズムのある意匠が成立している。
これは構造材を露出させる「真壁」と壁内に取りこむ「大壁」という手法を共存させた現代版数寄屋づくりともいえ、構造の制約にとらわれないSE構法の自由度があればこそ成立したともいえる。夫妻の美的感覚が実を結んだ住まいとなった。
設計
坪沼一希+五ノ井麻衣+SURF Architects
施工
株式会社山菱工務店 / https://sanryo.com/