当初、別の住宅会社で家の購入を検討していたA夫妻は、間取りも外壁も要望どおりにならないことを知ったという。そこで、ゆったりとした暮らしを実現するため、サンハウスと一緒に一から家づくりを始めた。
間取りは、中庭を中心として、キッチンダイニング、リビング、水回り、寝室、ウォークインクローゼットと回遊できるものを採用。2階は現在のところ、階段ホールを区切ることなく、そのまま子ども用スペースとなっている。どの部屋からも中庭を眺められるので、室内にいながら常に外界を意識することができて開放感が心地よい。
家の外周に窓を少なくしたのは、隣家の視線があるため。窓を作ってもカーテンをつける必要があることから、代わりに中庭を設けて内部へ大きく開口する方針をとった。中庭へ開く窓にはカーテンが必要ないこともあり、視線が抜けて広がりを感じることができる。
外壁はファサードラタンという仕上げで、杉板に防腐剤を含浸させ、防水シートとの間に通気口を設けて張っていく通気工法だ。リズミカルで個性的な外観となり、遮熱性にも優れている。
切妻屋根と木の外壁の取り合わせは、和風住宅としてめずらしいデザインではない。けれど、A邸のように軒を浅く、開口部を玄関のみとし、極力ミニマルな造作で建物のシルエットを際立たせた姿はモダンであり、新しい和風住宅の趣がある。間取り、外観ともに住み手の描く豊かさが形となった住まいが完成した。