雪谷M邸は、東京都大田区に建つ。道路側外観にはほとんど窓を設けず、代わりにルーバーから光や風を内側に引き込むつくりだ。
玄関に入ると、正面に花台、左手を向くと坪庭が目に入り、リビングへつながるガラス扉から洩れ出る光によって自然に入口へと誘われる。人の導線を綿密に組み立てたエントランスアプローチだ。
扉を開けるとリビングが広がり、隣接したテラスを中心に和室、リビング・ダイニング、キッチンがコの字形に囲む大きなワンルームとなっている。テラスから光が差し込むため、プライバシーを守りながら明るい空間づくりに成功している。
本宅は2回目の自邸建設とあって、M夫妻は実体験とアイディアをもって設計者とプランを詰めることができた。前述のエントランスのほか、生活動線の処理や、キッチンのシンクの納まりなど、各部分の細かいところまで考えられ、つくり込まれている。
M邸のもうひとつの特長は、全館空調を採用していること。全館空調とは住まい全体の空調を一括で管理できるシステムで、ひとつの空調設備から家中の空調をおこなうものだ。これにより、以前の家より床面積は2倍ほど広いが、電気代は安くなったというから喜ばしい。
全館空調が効きやすい間取りである、1階が大きなワンルームになる構造は、細かい柱や耐力壁を必要としないSE構法の強みが発揮されたもの。「SE構法×高気密高断熱×全館空調のコラボレーションが快適さを作り出した好例である。