碑文谷I邸は、東京都目黒区に建つ2階建ての住宅である。Iさん夫婦には、2歳から10歳までの子どもが4人おり、上ふたりが男子、下ふたりが女子の6人家族だ。
プランニングの特徴は、家族のパブリックスペースをたっぷり広く取り、個室はあまり設けていない点にある。
共有スペースの始まりである玄関の幅は3,000mm(3メートル)と広く、子ども4人が並んで靴をはけるゆとりがある。土間のように、自転車や屋外で使う道具類などを置けるので使い勝手が良い。
玄関の幅は、そのままホール、階段へと連続し、ギャラリースペースのような豊かな空間をつくっている。階段は16段で上がりきる仕様で、踊り場は2つあるため、小さな子も楽に上がれるようになっている。
2階のLDKと洗面所の入り口には、パーテーションを兼ねた縦ルーバー形状のラジエター式冷暖房機が設置されている。この機器は1台が180kg近くあり、2本足に荷重が集中するため、ラジエターの設置が想定された時点で、重みを受ける部分の梁構造が補強された。ここには注文住宅ならではの各家庭の事情に合わせて構造も変えられるという強みが生きている。
1階の子ども室は、いずれ3分割することもできるワンルームだ。ここが遊び場と化した場合、勉強したい子は2階のスタディルームへと移動できるので、各自思いおもいに過ごすことができる。
I邸は子どものライフスタイルに合わせながら「みんなの居場所」を贅沢に確保した、やさしい住空間なのだ。