設計者の内山さんは施主であるO夫妻の妹であり、ドイツ在住の建築家だ。また内山さんの夫はドイツ人の建築家であるため、O邸はドイツの近代建築の要素を色濃く反映した住宅となった。
プロジェクトはO夫人と内山氏の実家の建て替えで、敷地は桃ヶ池という由緒ある池を中心とした都市公園内にある。夫人は親から引き継いだ土地を子どもが受け継いでいけるよう、ニュートラルでシンプルな家を希望。Oさんはそれまで住んでいた集合住宅の天井の低さやリビングの狭さに不満があったため、新築に際しては第一に天井が高いこと、そして丈夫な家を要望した。
内山さんたちの事務所のキーコンセプトは「サスティナブル」で、熱効率の良い建物のフォルムはボックス型だという。拠点としているベルリンも、当敷地も夏場に通風を確保することが難しいことで共通していたため、開口部は気密性を高くして全館空調を採用。南側に庇や袖壁を設けて直接西日が入るのを防いでいる。
間取りは桃ヶ池の眺望を大切にするかたちで、2階の北側にLDKを配置。天井高は南下がりで3,473mm~3,930mmと高く開放感がある。南側には汎用性のある個室をふたつ設け、1階にはインナーガレージと倉庫、個室を2つ、水回りを配置。
特徴的なのは、玄関をはさんで個室となる仏間をつくった点で、法事やパブリックスペースとしての応接機能を果たすことを想定している。O邸は先鋭的な外観に日本文化の濃い暮らし方が内包された心地よい住まいとなった。