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大規模木造のケーススタディ「木造耐火3階建て高齢者福祉施設」セミナーレポート

  • 大規模木造のケーススタディ「木造耐火3階建て高齢者福祉施設」セミナーレポート -

高齢者施設ではこれまで鉄骨造で計画されていた建物が、木造へと転換する動きが活性化しています。今回の「大規模木造のケーススタディ木造耐火3階建て高齢者福祉施設」セミナーでは、SE構法で設計・施工された「ベストライフ杉並」の事例をもとに意匠設計や構造設計、木造耐火建築物のポイントについてお伝えしました。鉄骨造から木造への転換では、防耐火や大スパン、短工期などの課題に対応する必要がありますが、大規模木造でも対応は可能です。本記事では2021年2月25日に開催されたオンラインセミナー「大規模木造のケーススタディ木造耐火3階建て高齢者福祉施設」の内容についてダイジェストでお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

木造耐火3階建て高齢者福祉施設セミナーのプログラム

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の概要

耐火建築物の法的な境目

木造耐火3階建て高齢者福祉施設設計ポイント

木造、鉄骨造構造計画の違い

木造耐火3階建て高齢者福祉施設施工について

・高齢者施設木造で建てるメリット

大規模木造として耐火建築物SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

木造耐火3階建て高齢者福祉施設セミナーのプログラム

木造耐火3階建て高齢者福祉施設セミナーのプログラム

講師は、「ベストライフ杉並」の設計監理者である戸塚アーキテクツ:戸塚氏です。担当したNCNスタッフと共に実務に関するポイントについてお伝えしました。

高齢者施設の多くは、建築基準法27条による特殊建築物です。高齢者施設を計画する際に注意すべきことは、建築基準法以外に定められる各施設ごとの設置基準によって規定されている項目を遵守することです。

木造耐火3階建て高齢者福祉施設

施設ごとの設置基準により耐火建築物が求められることも多いですが、木造のメリットを活用することで、発注者の事業に貢献できる設計が可能となります。

関連記事:大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント

 

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の概要

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の概要

「ベストライフ杉並」は、木造耐火建築物の高齢者福祉施設(介護付有料老人ホーム)です。1階には事務室、浴室、食堂や厨房などが納められ、2階と3階には15床ずつ居室が設けられている施設です。

関連記事:ベストライフ杉並の事例紹介ページ

木造耐火3階建て高齢者福祉施設

木造で有料老人ホームを計画する際は、建築基準法以外で注意すべき規定があります。特にポイントとなるのは、「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」です。

高齢者施設は、運営主体、目的や入居条件によりさまざまな種類があります。その各施設ごとに設置基準等の規定が異なりますので注意が必要です。

関連記事:木造で高齢者施設を計画するための関連法規まとめ

 

耐火建築物の法的な境目

耐火建築物の法的な境目

建築基準法や各用途の施設設置基準等により、耐火建築物が求められるのは、以下のいずれかに該当する場合になります。

  • 防火地域内の延べ面積が100㎡を超えるか、階数が3以上の建築物(法第61条)
  • 準防火地域内の延べ面積が1,500㎡を超えるか、地階を除く階数が4以上の建築物(法第61条)
  • 高さが16ⅿを超えるか、地階を除く階数が4以上の建築物(法第21条)
  • 延べ面積が3,000㎡を超える建築物(法第21条)
  • 地階を除く階数が3以上の特殊建築物(法第27条)
  • 建築基準法以外の関係法令により耐火建築物が求められる保育所や老人福祉施設等

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

 

構造設計に関する注意点として、高さが13m又は軒の高さが9mを超える木造の建築物(構造計算におけるルート2の建築)においては、通常の確認申請に加えて「構造計算適合性判定」が求められます。

平成27年6月1日施行の建築基準法及び関係政令等の改正に伴い、同法第6条の3第1項ただし書き又は、第18条第4項ただし書きの規定に基づき、許容応力度等計算(ルート2)により安全性が確かめられた建築物の確認申請又は計画通知については、構造計算に関する高度の専門知識及び技術を有する建築主事(ルート2主事)が審査を行う場合、構造計算適合判定が不要となります。

関連記事:中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計

 

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の設計ポイント

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の設計ポイント

介護付き有料老人ホームでは、プライベートな空間である「居室」と、食堂、浴室、リビングなどの「共有スペース」で構成されています。

木造で耐火建築物を現実的に効率良く設計、施工するには、国土交通大臣認定を正しく理解してうまく活用する必要があります。国土交通大臣認定の耐火構造の仕様は、外壁、間仕切り壁、柱、床、梁、屋根、階段の部位に分かれています。

木造耐火3階建て高齢者福祉施設外観デザインは、塗り壁と木板を組み合わせた外壁となっています。国土交通大臣認定の仕様の中には、外壁に木板を貼ることのできる仕様も含まれています。

木造耐火3階建て高齢者福祉施設上記の写真は1階の食堂です。30名分のスペースです。

窓を多く設けており、天井を折り上げて二重天井になっています。明るく開放的な空間になっています。

木造耐火3階建て高齢者福祉施設上記の写真は2階の廊下です。2・3階は、中央部に階段やエレベーター、水廻りが配置されており、南北に居室が並ぶ中廊下型の平面計画となっています。

中廊下型だと室内が暗くなってしまいますので、エレベーターホールの周りに間接照明を計画して、共用部の空間を柔らかく照らしています。

木造の高齢者施設は、木の持つ魅力や特性により、他工法と比較して高齢者、高齢者を訪ねる家族、さらにはそこで働く方々に優しい建築を造ることができます。

関連記事:高齢者施設を木造で計画するメリット

 

木造、鉄骨造の構造計画の違い

木造、鉄骨造の構造計画の違い

大規模木造(SE構法)と鉄骨造を構造計画で比較します。鉄骨造では基本的にラーメン構造で考えることになるため、柱・梁のフレームをどのように組むかがポイントになります。

大規模木造(SE構法)は準ラーメン構造のため、柱・梁の構造フレームに加えて構造用合板を貼った耐力壁をX・Y方向に設置して耐震性能を確保します。鉄骨造においてブレース構造の場合は、柱・梁の構造フレームに加えてブレースが必要になります。

SE構法のポテンシャルを最大限に活用するために抑えておきたいのが「構造グリッド」の考え方です。

構造グリッドとは、柱・大梁・耐力壁で構成された構造フレームを立体的に組み合わせるための基本となる立体格子状のグリッド線の集まりをいいます。

この構造グリッド上に組み立てられた立体構造フレームが、鉛直荷重・水平荷重に対して安全であるように、構造計画を行ないます。

各階の平面グリッドは下階の平面グリッドと重なるように考えることが基本となります。上下階の平面グリッドが合わないと構造的に不安定になり、柱梁等が増えたり部材断面が大きくなったりするなど、構造的・経済的に無駄が多くなります。

関連記事:耐震構法SE構法で構造とコストを両立させる鍵は構造グリッドの理解

関連記事:脱炭素社会に木造化は必須!大規模木造(SE構法)と鉄骨造の比較まとめ

高齢者施設という用途を考えると、共用部に広い空間を得るためにスパンを飛ばしたい部分が発生します。敷地条件等により階高が限られるため、梁成と天井懐をできるだけ抑えることが設計のポイントになります。

それに加えて、木造耐火構造とするには梁下にも耐火被覆が必要になります。梁型が出てくると国土交通大臣認定の耐火構造の仕様を満たすための施工手間とコストがかかってしまいます。

上記2点の解決策として、単独の梁では構造計算で断面が大きくなりそうな梁には標準材を2本横に束ねた材として石膏ボードを梁下端に張り、梁成を抑えながらフラットな天井面を実現しています。

SE構法柱も梁に合わせて120×240mmの平角柱として、SE構法の強固な金物で柱と梁を緊結することで、梁のたわみを回避しています。

SE構法SE構法では意匠設計に応じて適切な構造計画を行ない、構造フレームや耐力壁、平角柱等を効果的に用いることで、構造躯体の安定性とコストパフォーマンスが両立でき、「強くて、安い」木造が実現します。

関連記事:耐震構法SE構法が「強くて、安い」のは構造フレームと耐力壁にワケがある

 

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の施工について

木造耐火3階建て高齢者福祉施設の施工について

「ベストライフ杉並」の施工を担当したのは、相羽建設株式会社様です。木造住宅や設計事務所案件の実績が豊富な建設会社です。

関連記事:相羽建設株式会社様のウェブサイトはこちらです。

「ベストライフ杉並」の施工のポイントは下記です。

1.木造耐火建築物の仕様を考慮した構造計画による施工性の向上

梁せいを揃えるなどの構造計画とすることで、木造耐火特有の大量の石膏ボード貼りの施工手間を必要最低限とすることで、施工性を高めています。

木造耐火建築物の仕様を考慮した構造計画による施工性の向上

 

2.階段は鉄骨を活用する

関連法規や施工性、コスト等を考慮して、階段は鉄骨階段としています。

階段は鉄骨を活用する

 

3.バルコニーは木造とスチールを使い分ける

性能、施工性等を考慮して、バルコニーの床部分は木造、外部手すりはスチールとしています。

バルコニーは木造とスチールを使い分ける

 

高齢者施設を木造で建てるメリット

高齢者施設を木造で建てるメリット

この「ベストライフ杉並」では、主に事業収支計画の側面から木造(SE構法)が選択されました。

高齢化社会を迎えつつも高齢者のピークを見越し、需要がなくなっても木造であれば建物の減価償却期間により撤退しやすいこと、またはスケルトンアンドインフィルの発想で可変性の高い建築計画とすることがポイントになっています。

高齢者施設を木造で建てるメリットは主に下記です。

・メリット1:木の持つ魅力と特性

・メリット2:建設コストが安い

・メリット3:補助金事業に対応しやすい

・メリット4:発注者のメリットが多い

・メリット5:耐火・準耐火も木造で対応可能

メリット6:大空間を実現できる木構造

関連記事:高齢者施設を木造で計画するメリット

 

大規模木造として耐火建築物をSE構法で実現するポイント

大規模木造として耐火建築物をSE構法で実現するポイント

大規模木造として耐火建築物を実現するためには、SE構法は最適な構法です。構造設計から構造材の材料供給、施工のサポートまでワンストップサービスで提供できるからです。高齢者施設を木造(SE構法)で計画するメリットは主に下記です。

 

1.木造耐火建築物の重量アップにSE構法は対応できる(構造躯体の強さ)

木造で耐火建築物で設計する場合、せっこうボード等の使用量がかなり増えることにより建物重量が重くなります。他の木造の工法では耐震性能の確保が難しくなったり、壁や柱が増えることにより設計の自由度が損なわれることがあります。SE構法は立体解析による構造計算と構造躯体の強度が強いことから、木造の耐火建築物にも問題なく対応できます。

関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.SE構法の構造設計(設計の自由度)

SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材の他にトラスや張弦梁を活用することが可能です。

関連記事:SE構法による大開口、大空間、大スパン、木造耐火の事例まとめ

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

今回のオンラインセミナーでは設計監理を担当されている設計者より木造耐火建築物の解説やSE構法の感想、NCNよりSE構法の構造設計についてお伝えさせていただきました。

NCNでは、大規模木造に取り組む設計者・施工者のために「大規模木造オンラインセミナー」を開催しています。大規模木造に関するさまざまなテーマをオンライン形式で皆様にお届けするセミナーです。

興味があるテーマのセミナーを自由に選択していただき、受講することが可能です。毎回、テーマを変えて大規模木造に関する情報提供をさせていただきます。本セミナーは下記リンクより動画で視聴することが可能です。

動画の視聴はこちらです。

※一部動画の視聴には無料の会員登録が必要となります。

本セミナーには、工務店様や建設会社様など、大規模木造に関心のある建築実務者の方に多数ご参加いただきました。これから大規模木造に取り組む建築実務者の皆様に対して、NCNから特にお伝えしたいことは下記です。

・大規模木造に取り組むことは、決して難しいことではない

・大規模木造の実務を合理的に進めるには、木造に詳しいパートナーを選ぶ必要がある

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。