【助成金情報】令和4年JAS構造材個別実証支援事業まとめ
令和4年JAS構造材個別実証支援事業の内容が発表されました。この事業はJAS構造材を活用する実証的取り組みに対し、その木材の調達費の一部が助成される仕組みです。株式会社エヌ・シー・エヌ(以下NCN)では、建築実務者向けに向けて、通常の構造設計や構造躯体供給に加えて、助成金情報の発信や申請のアドバイス、サポートを提供しています。このコラムでは、大規模木造で活用できる助成金について、木構造躯体供給メーカーの立場で伝えたいポイントを紹介します。(この記事は2022年4月7日時点の情報ですのでご注意ください。)
<2次募集のお知らせ>※2022年5月13日発表
令和4年度のJAS構造材実証支援事業について、1次募集の応募状況が予定より早く予算額に達する見通しとなったため、5月18日(水)17時(都道府県木連必着)で募集が締め切られることが発表されました。なお、2次募集は6月1日(水)に開始される予定ですので、これから事業申請をお考えの方は、2次募集の応募をご検討ください。
https://www.jas-kouzouzai.jp/news/47_index_detail.php
<このコラムでわかること>
・JAS構造材個別実証支援事業が注目される理由
・JAS構造材個別実証支援事業の概要
・JAS構造材個別実証支援事業の利用条件
・JAS構造材個別実証支援事業の助成額
・JAS構造材個別実証支援事業の申請スケジュール
・JAS構造材個別実証支援事業へのNCNのサービス
・大規模木造をSE構法で実現するポイント
・まとめ
JAS構造材個別実証支援事業が注目される理由
木造化・木質化の流れは、建築界に大きな影響を及ぼしています。建築分野における「脱炭素化」の柱の1つが、木材利用の促進です。
「持続可能な開発目標(SDGs)」への対応、「環境や社会、企業統治を重視する(ESG投資)」の拡大などを背景に、環境や社会への貢献度が企業価値を左右する時代が訪れています。
関連記事:「木造建築は「SDGs」や「ESG投資」でも企業価値を高められる理由」
近年、原燃料や資機材の価格高騰とその影響、国内外の物流網に与える影響やサプライチェーン(供給網)の混乱が続いています。
木材は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると工期や材料の納期が短いことから、建設会社にとっては木造化は現実的な手段となり得ます。
このような資材高騰局面の中、建設会社においては発注者や設計者の理解を得ながら、現実的に「建物を建てる」手段を構築することが求められています。
関連記事:【直撃】資材価格高騰局面での大規模木造におけるコストダウン対策
関連記事:【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(前編)
関連記事:【解説】大規模木造のリアルなコストの考え方(後編)
上記のような状況の中で、大規模木造で利用できる助成金として注目されているのが「JAS構造材個別実証支援事業」です。
JAS構造材個別実証支援事業の概要
大規模木造で利用できる助成金として注目されているのが「JAS構造材個別実証支援事業」です。
JAS構造材個別実証支援事業とは、JAS構造材を活用する実証的な取り組みに対し、その木材の調達費の一部を助成する仕組みで2018年から開始されています。
関連リンク:JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識
JAS構造材個別実証支援事業を利用するには、建築事業者等が低層の戸建て住宅を除く建築物(施主が国以外)において、構造部分にJAS構造材を利用することを通じて、設計、調達、施工時等におけるJAS構造材の利用に関する課題の抽出、改善策の提案などを行う必要があります。
全国木材組合連合会より令和4年度の【JAS構造材個別実証支援事業】の公募が開始されています。詳しくは下記リンクをご確認ください。
JAS構造材個別実証支援事業に取り組む場合には、必ずご自身で公募要領のご確認をお願いします。
JAS構造材個別実証支援事業の利用条件
大規模木造の構造躯体には、製材品質の確実性が重要であり、それにはJAS規格が大きな役割を果たします。JAS構造材は、品質が担保されていることが大きなメリットです。
JAS構造材個別実証支援事業の利用条件は下記です。
<対象物件>
・確認申請を提出済の物件(確認申請の受付印があればOK)
・3階以下の建築物で戸建住宅又は併用住宅でないもの
(上記以外でも神社、寺院、教会その他これらに類するものも適用外となるため、対象用途については要確認)
・建築主が国でないこと。
・基礎より上部部分で国からの助成を受けていないこと。
・10㎡以上の新築または増改築物件
・JAS構造材を活用する建築
・実証事業の成果を林野庁又は全木連が無償で活用し公表できることを建築主が同意したもの。
・林野庁が作成した「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」により実証事業者が炭素貯蔵量を算出するものであること。
「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」は、木造建築に利用した木材の炭素貯蔵量を計算し、国民や企業にとって分かりやすく表示する方法を示したものです。
日本は2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ)の達成を目指しており、このガイドラインには建築物における木材の利用を進め、炭素貯蔵効果を高める狙いがあります。
このガイドラインでは、建築物の所有者、建築物を建築する事業者などが「HWP」(Harvested Wood Products)に関する考え方を踏まえて、建築物に利用した木材における炭素貯蔵量を表示する場合の標準的な計算方法と表示方法を示しています。
JAS構造材個別実証支援事業の助成対象となる木材製品
ある規模以上の大規模木造を建てることになると、木造でも構造計算が必須となります。構造計算の必要な大規模木造においては、品質が明示されたJAS構造材は有利です。
JAS構造材個別実証支援事業の助成対象となる木材製品は下記です。
<助成対象となるJAS構造材>
・構造用製材(JAS機械等級区分)
・2×4工法構造用製材
・構造用集成材
・構造用LVL
・構造用CLT
・JAS構造用合板・構造用パネルの調達費(材料代・加工費・運搬費)
令和3年度の要件にあった、集成材の小断面・中断面の区別がなくなり、JAS構造用集成材であれば、一律の助成額を得ることができるようになった。
関連リンク:中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット
JAS構造材個別実証支援事業の助成額
JAS構造材個別実証支援事業の助成額は下記です。
助成金額は以下の1~3までの区分のうち、最も低い金額で決定する
<助成額>
助成金額上限額
15,000,000円
(1,000㎡以上または4階建て以上は30,000,000円)
1 事業申請時:(JAS構造材使用量(㎥)×66,000円)+(JAS構造用合板・パネル調達費×1/2)
※CLTの場合:JAS構造材使用量(㎥)×140,000円
2 交付申請時:(JAS構造材使用量(㎥)×66,000円)+(JAS構造用合板・パネル調達費×1/2)
※CLTの場合:JAS構造材使用量(㎥)×140,000円
3 交付申請時:JAS構造材調達費+(JAS構造用合板・パネル調達費×1/2)
JAS構造材個別実証支援事業の申請スケジュール
大規模木造で利用できる助成金を利用するためには、計画段階から構造設計、材料供給、施工までを確実に実現できる工法やサービスが必須です。
JAS構造材個別実証支援事業の申請スケジュールは下記となります。
<申請期間>※1次募集の場合
・事 業 申 請:2022年5月25日(水)17時必着(確認申請提出後)
・助成金交付申請:事業完了(※)後1ヵ月以内もしくは2022年9月30日(金)17時締切のいずれか早い期日迄
JAS構造材個別実証支援事業の申請スケジュール例は下記です。
関連リンク:ウッドショックで注目される構造用集成材が大規模木造に必須な理由
<2次募集のお知らせ>※2022年5月13日発表
令和4年度のJAS構造材実証支援事業について、1次募集の応募状況が予定より早く予算額に達する見通しとなったため、5月18日(水)17時(都道府県木連必着)で募集が締め切られることが発表されました。なお、2次募集は6月1日(水)に開始される予定ですので、これから事業申請をお考えの方は、2次募集の応募をご検討ください。
https://www.jas-kouzouzai.jp/news/47_index_detail.php
JAS構造材個別実証支援事業へのNCNのサービス
NCNでは、建築実務者向けに向けて、通常の構造設計や構造躯体供給に加えて、助成金情報の発信や申請のアドバイス、サポートを提供しています。
<NCNからのご提案>
・SE構法は、特に仕様変更することなく利用が可能
・構造設計と材料積算をワンストップでスピード対応が可能
・SE構法採用物件であれば、助成金申請サポートが可能(有償)
非住宅木造でお悩みの方は、まずは無料での構造の簡易チェック、構造体概算見積にてお手伝いさせていただいておりますので、下記よりお気軽にお問合せ下さい。
※2022年4月7日時点で未定部分もあるため、検討案件がある場合は、NCNまでお問い合わせください。
関連リンク:「ご依頼から施工まで(大規模建築におけるSE構法導入)」
大規模木造をSE構法で実現するポイント
鉄骨造から大規模木造(SE構法)に切り替えて計画する場合のポイントは下記です。
1.低層建築における木造の優位性
木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。
関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」
2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)
構造で大規模木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。
関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」
3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)
大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。
関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」
4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)
SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。
関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」
5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)
SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。
関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」
まとめ
JAS構造材個別実証支援事業に取り組む場合には、必ずご自身で公募要領のご確認をお願いします。
NCNでは、SE構法で独自に構築したシステムを活用しながら木造住宅に用いられる材料を利用することで、大規模木造の建設にかかるコストと時間軸を抑える取り組みを行なっています。
それに加えて、大規模木造に関する助成金をうまく利用していただくことで、より厳しいコスト管理が要求される仕事においても、木造化が可能になります。
大規模木造に関する、基本的な質問・相談や、具体的な案件の相談等、経験豊富な専門スタッフが直接対応します。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。