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広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

  • 広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ -

建築物の木造化はこれからの建築における大きな潮流です。大規模木造を実現する際の鍵となるのは「準耐火建築物」への対応です。木造の場合、耐火建築物と準耐火建築物では、建設コスト・工期・デザイン等に大きな差が生じるからです。準耐火建築物となることで、木造の優位性を発揮できるとも言えます。近年の建築基準法改正により、準耐火建築物に有利な内容が増えました。木造の準耐火建築物には「燃えしろ設計」や「木造3階建共同住宅(1時間準耐火)」等のメリットもあります。このコラムでは、大規模木造を計画する上で知っておきたい準耐火建築物のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

大規模木造で知っておくべき建築基準法における準耐火建築物の規定

大規模木造の実務で理解しておきたい耐火構造準耐火構造の違い

大規模木造準耐火建築物で実現するとコストパフォーマンスが向上

大規模木造における準耐火建築物の規定(防火地域準防火地域

大規模木造における準耐火建築物のメリット1燃えしろ設計

大規模木造における準耐火建築物のメリット2木造3階建て共同住宅

大規模木造における準耐火建築物のメリット3特別養護老人ホーム

・まとめ

 

大規模木造で知っておくべき建築基準法における準耐火建築物の規定

大規模木造で知っておくべき建築基準法における準耐火建築物の規定

木造化の大きな節目となったのが、2019年に改正された建築基準法です。従来は耐火建築物でしか設計できなかった建物が、消火や避難に関して適切な措置によって準耐火建築物として設計できるようになりました。

準耐火建築物とは、耐火建築物以外の建築物で、主要構造部が準耐火構造(法2条9号の3 イ)又はそれと同等の準耐火性能を有するもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸等を有する建築物のことをいいます。

準耐火構造とは、壁、床、柱等の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能の基準に適合する構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものです。

準耐火性能とは、通常の火災による延焼を抑制するために必要とされる性能で、火熱が加えられた場合に、加熱開始後、示された時間において構造耐力上支障のないものをいいます。

準耐火建築物は、以下の4つの種類に分類されます。準耐火建築物は、それぞれの種別ごとに「主要構造部の構造」が異なります。

・準耐火建築物(イ-1):主要構造部を1時間準耐火基準に適合する準耐火構造

・準耐火建築物(イ-2):主要構造部を45分準耐火基準に適合する準耐火構造

・準耐火建築物(ロ-1):主要構造部を準耐火構造と同等の耐火性能をもつこと

・準耐火建築物(ロ-2):不燃材料で造られており準耐火構造と同等の耐火性能をもつこと

主要構造部を準耐火構造で造り「イ準耐火」とするか、不燃材料で造ることにより「ロ準耐火」とするかで、建築基準法の制限が変わります。

 

建築基準法では、主に3つの観点から、避難や消火活動が無理なく行えるような防耐火設計が義務付けられています。

 

①火炎が建物内で燃え拡がらないようにすること

内装仕上げ材の不燃化(準不燃化)によって、火災の燃え拡がりを抑制する内装制限[建築基準法35条の2]があります。

 

②火災で建物が壊れないようにすること

用途地域、建築物の用途・規模(階数・延べ面積)に応じて、耐火構造[建築基準法2条9号の2]と準耐火構造[建築基準法2条9号の3]という2つの構造制限が設けられています。耐火構造とは、火災で建物が倒壊するのを防ぐ構造であり、火災終了後も建物が倒壊することはありません。準耐火構造では、建物内にある収納可燃物や建物の内外装が燃焼している間は、火災で建物が倒壊するのを防ぐことができます。

 

③隣接する建物からの火炎が建物内へと燃え抜けないようにすること

市街地火災を防ぐための方策であり、延焼の防止と言い換えられます。隣接する建物からの火炎を建物内部に燃え抜けさせない手立てとして、防火構造[平成12年建設省告示1359号]・準防火構造[平成12年建設省告示1362号]や防火設備[平成12年建設省告示1360号]があります。

 

防耐火規制では、これまで建築物を「その他の建築物」「準耐火建築物」「耐火建築物」の3つに分類してきましたが、2019年の建築基準法改正後は耐火建築物と同等の性能をもつ「準耐火建築物+α」という概念が登場しました。延焼防止建築物(耐火建築物と同等)と、準延焼防止建築物(準耐火建築物と同等)があります。

関連記事木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

大規模木造の実務で理解しておきたい耐火構造と準耐火構造の違い

大規模木造の実務で理解しておきたい耐火構造と準耐火構造の違い

2019年の建築基準法改正により、従来は「耐火構造」であることが求められていた規制について、所定の安全措置を確保することで、それ以外の構造(「準耐火構造」)とすることが可能になりました。

「耐火構造」と「準耐火構造」に共通する事項としては、両者ともに、必要性能として火熱に対して次の3つの性能が確保されている点が共通しています。

 

1.非損傷性

通常の火災による火熱が加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊、その他の損傷を生じないものとする性能。【耐力壁・床・柱・梁・屋根・階段】

 

2.遮熱性

通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱面以外の面(屋内面に限る)の温度が当該面に接する可燃物が燃焼する恐れのある温度以上に上昇しないものとする性能。【壁・床】

 

3.遮煙性

屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとする性能。【外壁】

 

「耐火構造」と「準耐火構造」に違いが生じるのは、加熱が終了した後の性能です。指定された時間の加熱が終了後、「耐火構造」は引き続き壊れないものとすることが求められている構造であるのに対して、「準耐火構造」については加熱終了後の性能は規定されていません。

2019年の建築基準法改正では、あくまでも「全ての主要構造部を耐火構造とした建築物」によって確保されてきた安全性について、規模・用途・立地の3つの観点のそれぞれに応じて「主要構造部とその他の措置を総合的に評価」することで同等以上の安全性を確保することとしています。

「性能の高い準耐火構造」を含めた設計法が追加されることで、個別の建築物の計画に応じた安全対策を確保することで、耐火構造以外の方法による設計が可能になったことがポイントです。

性能の高い準耐火構造が可能となることで、例えば「燃えしろ設計」によって木材をあらわしのまま構造部材として用いることが今まで以上に実現しやすくなるということになります。

 

大規模木造は準耐火建築物で実現するとコストパフォーマンスが向上

大規模木造は準耐火建築物で実現するとコストパフォーマンスが向上

大規模木造のコストを検討する際に、必ず考えておかなければならないのが「防火・耐火」です。鉄骨やコンクリートに比べて燃えやすい木材(木は火に弱いということではない)という材料を使って、法規の基準を満たした火災に強い建築をつくることが求められます。

大規模木造は、規模や建築基準法、各種基準により、耐火建築物や準耐火建築物の仕様が求められることが多くなります。

木造は準耐火建築物であれば、建築基準法改正による優遇や、耐火建築物と比較してコストパフォーマンスが向上するなどのメリットが大きくなります。

耐火建築物よりも準耐火建築物のほうが、建材や施工の費用を抑えることができ、大幅に建設コストを抑えることができます。木造の準耐火建築物のコストと比較して、木造の耐火建築物とすることで最もコストアップとなるのが内壁、外壁、設備工事です。内壁・外壁では、石こうボードや断熱材の費用が増します。

このため、木材を現しで使う場合などには、防火・耐火のコストをできるだけ上げないように、建築計画を慎重に検討する必要があります。

関連記事:「大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント」

 

大規模木造における準耐火建築物の規定(防火地域・準防火地域)

大規模木造における準耐火建築物の規定(防火地域・準防火地域)

建築の主要構造部(壁、柱、梁、床、屋根、階段)に必要な防耐火構造は、「建築地の防火地域」「建物の用途」「建物の高さ」の3つの規制による構造制限のうち、もっとも厳しい規制が適用されます。

これまでは、防火地域では2階建て超えまたは延べ面積100m2超え、準防火地域では3階建て超えまたは延べ面積1,500m2超えの場合、耐火建築物等にすることが求められました。

2019年の建築基準法改正後は、耐火建築物と同等の延焼抑制機能をもつ、外周部(外壁、軒裏、開口部)を強化した準耐火構造等の建築物として設計が可能になりました。

2019年の建築基準法改正後は、準防火地域に計画される耐火建築物および準耐火建築物について、建ぺい率を10%加算できるようになりました。木造で計画する場合でも準耐火建築物で実現すれば建ぺい率を10%加算できますので、今までよりも有効な設計提案が可能になります。

関連記事:耐火の適用範囲拡大は中大規模木造の追い風に!改正建築基準法の解説

 

大規模木造における準耐火建築物のメリット1(燃えしろ設計)

大規模木造における準耐火建築物のメリット1(燃えしろ設計)

準耐火建築物であれば、「燃えしろ設計」によって木材をあらわしのまま構造部材として用いることができます。

燃えしろ設計とは、木製の柱・梁について、火災時に燃えるであろう厚みをあらかじめ構造上必要な断面に付加する手法です。これは燃え進み方が緩慢な木造の性質を工学的に評価したもので、木材による木材の耐火被覆のイメージです。

耐震構法SE構法では独自の計算方法により「梁幅を変えずに梁せいを上げるだけ」の燃え代設計が可能ですので、特注材などを用いることなく構造材コストの上昇は最小限に抑えられることも大きなメリットです。

関連記事:準耐火建築物であれば「燃え代設計」により木造の構造体を現しにできる

関連記事:JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

 

大規模木造における準耐火建築物のメリット2(木造3階建て共同住宅)

木造3階建共同住宅 木三共

共同住宅は、法27条による特殊建築物です。法27条1項により3階以上を特殊建築物の用途に供する建築物は、耐火建築物とする必要があります。

共同住宅については、利用者が特定の者で建物の構造を充分に理解していること、円滑な避難が期待できること、および各住戸ごとに小規模区画されており火災の拡大が比較的遅いことなど、防火上や避難上、他の特殊建築物に比べて有利な条件を有していることから、防火および避難に関する一定の技術基準に適合する「1時間準耐火建築物」とすることができ、防火地域以外の区域内に建設することが可能です(木三共)。

関連記事:木造3階建て共同住宅(木3共)のメリットやコスト 準耐火建築物で建てる仕様とは?

木造の共同住宅の場合、内装制限は、該当する規模になると、内装に不燃材料、準不燃材料、難燃材料等の使用が必要などの制限がかかります。

大規模木造における建築基準法の規定(共同住宅)については下記をご参照ください。

木造で共同住宅を計画するための関連法規まとめ

 

大規模木造における準耐火建築物のメリット3(特別養護老人ホーム)

大規模木造における準耐火建築物のメリット3(特別養護老人ホーム)

国は高齢者施設に関する規制改革を進めており、厚生労働省から「構造改革特別区域における特別養護老人ホーム等の2階建て準耐火建築物設置事業の全国展開について」という通達が発表されています。全国の特別養護老人ホーム等において条件付きで「準耐火建築物」で建設することが可能になっています。その内容は下記です。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設,指定短期入所生活介護事業所および指定介護予防短期入所生活介護事業所(「特別養護老人ホーム等」といいます。)については、原則として耐火建築物であるが、2階および地階に居室(療養室)その他利用者の日常生活に充てられる場所(「居室等」という。)を設けていない準耐火建築物であることが求められます。この要件の特例として,2階または地階に居室等を設ける場合等であっても,一定の要件を満たした場合,準耐火建築物とすることが認められています。

 

<準耐火建築物の2階または地階に居室等を設ける場合の3要件>

1  所在地を管轄する消防長又は消防署長と相談の上,非常災害に関する具体的計画に入所者の円滑かつ迅速な避難を確保するために必要な事項を定めること。

2  避難,救出等の訓練については,計画に従い昼間および夜間において行うこと。

3  火災時における避難,消火等の協力を得ることができるよう,地域住民等との連携体制を整備すること。

※具体的な確認方法については地方自治体等が発表している要綱をご確認ください。

 

まとめ

木造で施設を計画する際には、建築基準法に加え、関連する条例等を遵守することが求められます。

法律や条例等は常に改正されていきますし、その解釈や運用については該当の行政窓口や指定検査確認機関等により異なりますので、本コラムの内容は「記事掲載時の一般的な考え方」であることのご理解、ご了承をお願いします。

建築実務者の皆様においては、常に最新の法規等の情報をチェックしつつ、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進めていただくようお願い申し上げます。

 

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい工法は集成材構法です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。