「南区の離れ」は、岡山市南区彦崎に建つバウムスタイルアーキテクトの事務所である。代表の藤原さんは、この事務所に隣接する実家で育った。
事務所は北側の道路を挟んで新興住宅地と向き合っている。一方で東西には古くからの住宅群があり、それらは外壁に焼き杉を用いていることが多い。藤原さんは、伝統的な景観との連続性を意識して、事務所の外壁に焼き杉を採用した。
切妻を北に向けたファサードには1階と2階に小さな窓がひとつずつあるのみ。外界とのつながりを最小限に抑えながら、植栽の間にコンクリート製のベンチをひとつ据えて場を提供している。このような計算された距離感の構えは、現代人の社会性の表れともいえそうだ。
玄関は南側で、西側から回り込んでアプローチする。小さな建物だがそれを感じさせないよう距離を設け、人が出会う場に至るまでの時空間にメリハリをつけている。玄関を入るとダイニング、その奥にキッチンがあり、右手の1段上がったところがリビングで、その脇は2階へ上がる階段だ。
2階は事務所で、階段の踊り場のようなスペースが藤原さんの席になっている。この建物は、実家の「離れ」として「用途不可分」という法的位置づけになっているが、藤原さんは住宅のような空間を望んだため、くつろぎの空間を備えた仕様となった。
トイレは1階にあり、浴室はない。が、いつか住むことも視野に入っていそうなミニマルで心地のよい空間だった。
設計・SE 施工
株式会社バウムスタイルアーキテクト / https://www.baum-style.com/