1905年に創業した阿部建設。現在5代目社長の弟にあたる阿部専務が設計したのが、こちらの自邸である。阿部専務はこれまで郊外に住んでいたのだが、50代半ばを迎え、将来のことを見据えて都心に戸建てを新築するに至った。
1階には玄関と車3台分のインナーガレージ、ワークルームと納戸を配している。ガレージスペースは、運転をやめたとき別用途に改装することを視野に入れている。また納戸は将来、家庭用エレベーターを設置することを見越して、各階とも同じ場所を納戸としている。
2階は南側にリビングダイニング、中央に和室を配置。洗面脱衣所と浴室へはキッチンを通って行くことになるが、家事動線と浴室の利用頻度を比較しての選択だ。和室はふだんリビングの一部として使われているが、押し入れ脇に格納している90度回転する障子を引き出せば個室となる。独立した子どもが家族を連れて帰省する際、寝室として使えるようになっているのだ。
この建具のように、壁内に引き戸を納めるやり方は阿部建設の標準設備。手間のかかる工事ではあるが、SE構法で得られる開放的な空間を効率的に使い、空間を美しく間仕切るための美学といってもいいだろう。
阿部専務は住宅設計に際してSE構法ならではのプランニングを心がけており、在来工法で必要となる柱を抜いて構造計算を依頼する。効率的な耐力壁の配置を意識してクライアントの費用負担を軽減しつつ、自由度が高い空間への挑戦を続けている。
設計・施工
阿部建設株式会社 / https://www.abe-kk.co.jp/