【大規模木造で注目】SE構法の木造4階建て事例まとめ
非住宅建築物における木造化・木質化が進んでいます。公共、民間建築物とも特に低層から中層の非住宅建築物に関しては積極的な木造化が求められています。非住宅建築物の木造比率が高まれば、その分だけ社会における炭素貯蔵機能が増えることになります。社会全体の「ウッドチェンジ」が成功するための一つの方策が建築物の木造化です。
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中で4階建てを計画する際に、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。
このコラムではSE構法による木造4階建ての事例についてお伝えします。
<このコラムでわかること>
・非住宅を木造4階建てで建てるメリット
・SE構法の木造4階建ての事例(共同住宅)
・SE構法の木造4階建ての事例(事務所)
・SE構法の木造4階建ての事例(木造ビル)
・SE構法の木造4階建ての事例(事務所併用住宅)
・SE構法の木造4階建ての事例(注文住宅)
・大規模木造をSE構法で実現するポイント
・まとめ
非住宅を木造4階建てで建てるメリット
企業の環境への取り組みに対する注目も高まっており、国内の森林保全や林業の育成、地方創生などの視点も重要になっています。
そうした面からも木材の需要を伸ばすことが課題であり、中高層建築においても木造化が求められています。木造4階建てのメリットは下記です。
1.建設コストが鉄骨造より安い
木造は、大工による施工が中心のため、施工費の変動はほとんどありません。
大工は、地域によって施工費の相場も決まっています。
木造の耐火建築物は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造として「建物重量が軽い」ことが、大きなコストダウンのポイントとなります。
特に地盤改良工事、基礎工事、構造躯体工事のコストを抑えることができます。
2.木造は軽いため、軟弱地盤に対応しやすい
敷地が軟弱地盤だった場合、地盤改良工事を行う必要があります。
大規模木造は、建物重量が鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して大幅に軽いことから、求められる地耐力が小さくなるため地盤改良工事をコストダウンすることができます。
大規模木造は、建物重量が鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して大幅に軽いことから、基礎断面を小さくすることができます。
木造の基礎断面が小さいということは、鉄骨造あるいは鉄筋コンクリート造と比較して、主に下記の理由によりコストダウンが可能になります。
・根切り底が浅いため、残土処分量を減らせる
・立ち上がり部分やフーチング部分の寸法が小さく、型枠や配筋量が減らせる
・作業量が少なく、工期短縮が可能になる(現場経費の軽減につながる)
3.減価償却期間が短い
木造は減価償却期間が鉄骨造より短く設定されており、年間の経費をより多く計上することができ、節税効果を得ることができます。
特に店舗等の短期で償却する案件には有利です。
事業計画においては、減価償却期間の短さや解体時のコスト等を考慮した結果、鉄骨造よりコストダウンができるということで、木造が選択されることがあります。
一方で、耐用年数はあくまで税法上で定められた年数でもあり、現代建築ではメンテナンスを適切に行うことで更に長期に使用することも可能です。
SE構法の木造4階建ての事例(共同住宅)
SE構法の木造4階建ての事例として「LAPEACE菊水」があります。
<「LAPEACE菊水」の概要>
・脱炭素社会の実現へ向けて、環境共生住宅として建物を構成する主要構造部材は全て道内産を使用し、道内でプレカットを完結した建物です。
・木造化することによって、C02を固定化でき、軽量化で地盤補強を軽減でき、コスト削減にも繋がります。RC造より工期が40%短く、木材特有の断熱性、調湿性により健康で快適な環境も実現できます。
・北海道初の高性能木造中高層アパートメントで、光熱費が約半分に抑えられる省エネ性のほか、木材のデザイン性、断熱性、調湿性、快適性などの付加価値をつけて相場の2割高い賃料を想定しています。
<この木造4階建てにおけるSE構法の構造設計ポイント>
・独自の接合金物を使うSE構法は、剛性の高い木造の架構を組むことができるため、木造4階建に求められる構造躯体を実現することができます。
・木造4階建かつ耐火建築物であることから建物重量がとても大きくなるため、通常の構造ディテールに加えて、標準材として準備されている「平角柱」を使うことで、コストを抑えた構造計画となっています。
・SE構法は多雪エリアの積雪荷重にも対応可能です。寒冷地では冬場に屋根に積もる雪の重さを考慮しておく必要があります。SE構法は、許容応力度計算に基づく構造計算を全棟実施しておりますので、建設地の条件に応じた構造設計が可能です。
SE構法で実現した4階建ての共同住宅の事例は下記です。
関連記事:SE構法による木造4階建共同住宅の計画・設計まとめ
SE構法の木造4階建ての事例(事務所)
SE構法の木造4階建ての事例として「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」があります。
<「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」の概要>
・計画地は駅からも近い商業地域、防火地域でもあり、耐火建築物
・4階建ての木造(SE構法)と避難経路を兼ねた2階建ての鉄骨造の建物との平面混構造
(構造的には分離、エキスパンジョイントあり)
・1階から3階までは事務所用途のテナントスペース、最上階の4階は住居
<この木造4階建てにおけるSE構法の構造設計ポイント>
・狭小地の設計施工で、鉄骨造だと接合部の点数が増えてコストアップにつながってしまうため、木造で計画することで逆に材長が6m以下の流通規格の材料を中心に設計することができ、コストダウンを実現しています。
・鉄骨造と比較して重量の軽い木造でも木造耐火による被覆を行う事によって重量が重くなり、かつ4階建てなので一般的な在来軸組工法では計画すること自体が困難です。SE構法では耐力フレーム・耐力壁を効率的に配置でき、難なく計画することができ、必要な開口も確保することが可能です。
SE構法で実現した木造耐火建築物の4階建て事務所ビルの事例は下記です。
関連記事:木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」
SE構法の木造4階建ての事例(木造ビル)
SE構法の木造4階建ての事例として「すぎ歯科クリニックビル」があります。
<「すぎ歯科クリニックビル」の概要>
・木造ビルのゾーニングは、1階が受付・待合スペース、2・3階が診療スペース、4階が専用スペースです。
・4階建てとなり一時間耐火構造が要求され、告示仕様(1399号)と日本木造住宅産業協会の耐火構造の2種類の仕様を部位によって使い分けています。
<この木造4階建てにおけるSE構法の構造設計ポイント>
・SE構法の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現しています。
・構造的に応力や荷重が集中する部分には、短辺方向に平角柱、大梁を抱き合わせにするディテールを用いることで、特注材を最小限に抑えています。
関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ
SE構法の木造4階建ての事例(事務所併用住宅)
SE構法の木造4階建ての事例として計画中の「事務所併用住宅」があります。
<「事務所併用住宅」の概要>
・事務所併用住宅のゾーニングは、1階が車庫、2・3階が事務室、4階が住宅です。
・敷地は3方向の道路に面しており、厳しい斜線制限をクリアしながら、木造4階建ての建築計画を実現しています。
・屋根には太陽光パネルを設置しており、省エネにも配慮した計画です。
<この木造4階建てにおけるSE構法の構造設計ポイント>
・木造4階建てでありながら、車庫や事務室などを柱の無い大空間として実現しています。
・基本的には住宅スケールで使用する構造用集成材の規格材で構造躯体を成立させています。特注材の使用を極力抑えることでコストパフォーマンスを上げています。
関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」
SE構法の木造4階建ての事例(注文住宅)
SE構法の木造4階建ての事例として「注文住宅」があります。
<「注文住宅」の概要>
・4階建てとなり一時間耐火構造が要求され、告示仕様を採用しています。
・EVはホームエレベーターを採用して、鉄骨のEVフレーム無しで木造躯体に直接接合しています。
<この木造4階建てにおけるSE構法の構造設計ポイント>
・木造4階建てでありながら、1階にビルトインガレージを実現しています。
・木造4階建ては重量が重く、設計地耐力は50KN/㎡程必要になり、通常の木造よりは重いため、設計の際は注意が必要です。SE構法であれば対応可能です。
関連記事:木造でも高さ16m以下であれば防耐火要求無し!改正建築基準法の解説
大規模木造をSE構法で実現するポイント
大規模木造をSE構法で計画する場合のポイントは下記です。
1.低層建築における木造の優位性
木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。
関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」
2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)
構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。
関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」
3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)
大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。
関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」
4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)
SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。
関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」
5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)
SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。
関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」
まとめ
都市部を中心に、中大規模木造の計画が活性化しています。
木造はもはや都市建築の選択肢の一つとなっています。発注者は環境重視の姿勢を強めています。
設計者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。
SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。
都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。
NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。
計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。
SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。