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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

ウッドショックで注目される構造用集成材が大規模木造に必須な理由

  • ウッドショックで注目される構造用集成材が大規模木造に必須な理由 -

大規模木造の設計は、木材を「適材適所」で使用することが基本です。2021年に発生した第三次ウッドショックのような事態は材料供給リスクを引き起こし、設計そのものに大きな影響を与えますので注意が必要です。大規模木造において、材料としての品質や強度、コストバランス、供給体制を考えると、構造用集成材の採用が最も現実的な選択となります。大規模木造に必須な構造計算では、部材強度のばらつきが少ない日本農林規格(JAS)の認定材料を使うのが有利です。大規模木造の計画に製材で無等級材を使用することは、あまり現実的ではありません。このコラムでは、ウッドショックで改めて注目される構造用集成材が大規模木造に必須な理由についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

・大規模木造に必須な構造用集成材とは?

大規模木造で必要な構造用集成材国産材でも輸入材でも製造できる

・大規模木造では JAS構造材(構造用集成材)を使うべき理由

・ウッドショックで注目される国産材による構造用集成材

・大規模木造で注意すべき構造用集成材の特性

・大規模木造SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

大規模木造に必須な構造用集成材とは?

大規模木造に必須な構造用集成材とは?

集成材は、ひき板や小角材等を材料として、その繊維方向を平行にそろえて、厚さや幅、長さの方向に集成接着した木材のことです。その用途によって「造作用」と「構造用」に大別されます。造作用は、建物の内部造作などの非耐力部材に用いられ、構造用は、建物の骨組みなどの耐力部材に用いられます。

国際的には、集成材といえば構造用集成材を指します。日本農林規格(JAS)では、「造作用集成材」「化粧ばり造作用集成材」「化粧ばり構造用集成材」「構造用集成材」の4つに分類して、その品質や性能の基準を定めています。

構造用集成材は「科学された木材」と言われ、製造過程で板(ラミナ)1 枚ごとの節の大きさや曲げヤング係数を計測・選別して製造されています。

構造用集成材は、より高い加工が施された工業製品と言えるもので、製材品に比べても優れた特性を持っています。例えば、割れ、そり、曲がり、ねじれ等の狂いが発生しにくく、また乾燥されているため、腐りにくいものです。

それに加えて、接着技術の進歩によって、より高い耐久性能も持っています。構造用集成材の接着性能は安定しており、剥離することはありません。JAS 認定工場で製造された構造用集成材は、接着剤の塗布管理を徹底していますので、集成材の接着の信頼性は高く剥離することはほぼありません。

日本農林規格(JAS)を満たした構造用集成材は、含水率試験の結果、同一試料集成材から採取した試験片の含水率の平均値が15%以下であることとされています。実際の含水率は、工場での製作時は10%程度、現場で施工する際には12〜13%と言われています。含水率が低いということは、材の強度が発揮されやすいと言えます。

関連記事:中大規模木造の構造材の特性やメリット・デメリット

 

大規模木造で必要な構造用集成材は国産材でも輸入材でも製造できる

大規模木造で必要な構造用集成材は国産材でも輸入材でも製造できる

木質材料には、さまざまな樹種、再構成材があります。現在の状況に照らすと、構造用集成材の主流は、国産材ではスギやカラマツ、輸入材ではオウシュウアカマツです。

強度区分は、構造用集成材(対照異等級)では、スギE65-F225、カラマツE105-F300、オウシュウアカマツE105-F300、がそれぞれの標準的な材料です。強度等級は、曲げヤング係数(たわみにくさの指標を表すE)と、曲げ強さを表すFの組み合わせの等級区分により表示されます。 E-Fの等級は樹種やラミナの構成等により何種類もあります。

多く使用されている戸建住宅用の構造用集成材は、中断面のもので梁幅が105mmもしくは120mm、梁せいは150mmから450mm(梁せいは180mm、210mmなど30mmごとに製造されている)ものが標準として、一般的に流通材として利用されています。

大規模木造では空間が大きくなればなるほど、固定荷重や積載荷重も大きくなり、戸建住宅の応力とは異なる部材寸法を選択することになります。必要とされる防耐火性能も高くなるため、例えば準耐火建築物として燃え代設計を考慮すると、部材断面はその分大きくなります。

そのため、設計内容に応じて、梁幅が150mm以上、梁せいも450mm以上の大断面の部材を利用することになります。梁幅が大きくなると柱サイズにもよりますが意匠的な納まりにも影響がありますので、梁幅は120mmとして梁せいを上げて対応する構造計画が一般的です。

関連記事:ウッドショックが顕在化させた木材供給リスクと国産材の課題

 

大規模木造では JAS構造材(構造用集成材)を使うべき理由

大規模木造では JAS構造材(構造用集成材)を使うべき理由

大規模木造においては、建物規模により、許容応力度計算が求められます。

許容応力度計算をする上で知っておきたい点として、 建築基準法の目標とする性能との関係を理解しておく必要があります。

建築基準法は、地震に対しては2段階の目標があります。中地震では構造体に損傷がなく、大地震には倒壊を防いで人命を守るというものです。これを部材や接合部の性能に言い換えると、中地震時には弾性範囲にあること、大地震時には塑性域に達しても破壊しないこと、となります。

許容応力度計算は弾性範囲を扱う設計法なので、この計算では大地震時の倒壊等防止に関しては、直接的には計算していません。しかし、許容応力度を超える力が建物に加わったときの耐力や靭性の余裕度が分かっていれば、大地震時の倒壊を防ぐことができます。

つまり、中地震に対する設計を行うことで、間接的に大地震時の性能を担保しています。これが許容応力度計算の最も重要なポイントといっても過言ではありません。

このような設計を実現するためにも、性能が分かっているJAS認定材料を使うことが重要になります。そのためJAS構造材に対し、製造事業者や設計者などの関心が高まっています。

大規模木造などが増えれば構造計算が必須です。基準強度などの品質性能がはっきりしたJAS構造材の需要は今後増してきます。

JAS構造用製材は性能がはっきりしているので、設計時に材料を選ぶ際、適材適所で等級を使い分けることもできます。そのことは、設計の自由度を高めることにもつながります。

関連記事:JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

 

ウッドショックで注目される国産材による構造用集成材

ウッドショックで注目される国産材による構造用集成材

日本は先進国でも有数の森林保有国でありながら、木材自給率が低く、生産体制が脆弱であるため、輸入材の不足分を補えず、2021年に発生した第三次ウッドショックのような混乱に陥っています。

将来的には、木造住宅や大規模木造で用いる梁材や柱材などの部材を、国産材を使って安定価格で安定供給できる体制の構築こそが、ウッドショックのような木材供給リスクの再発防止のためには欠かせません。

梁材は、国産材への仕様変更が最も難しい部材です。国産材のマツやヒノキは、輸入材のベイマツやレッドウッドよりも曲げヤング係数などの部材強度が低いため、スパンを大きく飛ばすのが難しいからです。

国産材による構造用集成材の生産を拡大する動きも始まっています。横架材については、スギやヒノキだけでレッドウッドと同じ強度を確保するのは困難ですので、スギやヒノキとは別の木材を組み合わせることなども必要になると予想されます。

構造用集成材の使用に際しては、用途に応じた構造用集成材の品種を接着性能・強度性能・その他の性能によって選択し、安心して使用できる構造用集成材を選ぶことが重要です。

関連記事:ウッドショックで再注目の国産材と大規模木造、SE構法の関係性

 

大規模木造で注意すべき構造用集成材の特性

大規模木造で注意すべき構造用集成材の特性

構造材といっても、コスト、材種、樹種、強度、制作可能サイズ等様々あるため、事前にそれぞれの特徴を知ることで、適材適所の活用が可能となります実際の計画においては、構法や構造材を的確に判断し、構造を提案できる構造設計者の存在が重要です。

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい(コストと強度のバランスがよい)のは構造用集成材です。大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

許容応力度計算は、外力によって建物の各部材に生じている応力度を求め、その材料の許容応力度を超えていないことを確認する設計法です。構造計算には、使用する材料の許容応力度が必要となります。

以前は建築基準法施行令でその許容応力度が直接に与えられていましたが、現在は「基準強度(F)」が示されており、それに係数を乗じて短期や長期の許容応力度を求める方法に改められています。

基準強度とは、木材の場合、材料の破壊強度の下限値のことです。基準強度は、実物大で破壊試験を行い、その結果を正規分布としたときの5%下限値といわれています。

構造用集成材は品質や強度が優れていますが材料としての限界はありますので、木造を熟知した構造設計者と協働することが重要です。

関連記事:中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計

 

大規模木造をSE構法で実現するポイント

大規模木造として店舗をSE構法で実現するポイント

大規模木造をSE構法で計画する場合のポイントは下記です。

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

今回の第三次ウッドショックは、輸入材に依存し過ぎた木造の材料供給リスクを顕在化させました。2019年の木材需給表(林野庁)によると、日本で建築に使われている製材用材の自給率は約51%、合板用材の自給率は約45%です。

大規模木造の設計は、木材を「適材適所」で使用することが基本ですが、ウッドショックのような事態は、設計そのものに関わることになりますので、注意が必要です。

その対策の鍵となるのが、国産材による構造用集成材です。すぐには改善できない大きなテーマですが、長期的な視点で取り組むことが求められています。

 

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

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