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ウッドショックで再注目の国産材と大規模木造、SE構法の関係性

  • ウッドショックで再注目の国産材と大規模木造、SE構法の関係性 -

国は建築物の木造化・木質化を推進しています。森林資源が豊富にある日本においては、木材の供給先の確保が重要になります。そこで注目されるのが大規模木造です。今までは木造住宅が主たる供給先でしたが、非住宅建築物の木造化が普及することにより、需要は大きく増大します。2021年は第三次ウッドショックにより、輸入材が厳しい状況ということで、国産材に注目が集まっています。このコラムでは、ウッドショックで再注目の国産材と大規模木造、SE構法の関係性について詳しく解説します。(本記事は2021年6月段階での情報です。状況の変化が予想されますので、ご注意をお願いします。)

 

<このコラムでわかること>

非住宅建築物木造化、木質化の流れ

大規模木造において国産材で注目される理由

国産材の現状と抱える課題

国産材活用の鍵となるのは大規模木造

大規模木造における国産材活用の鍵はJAS構造材

大規模木造国産材を活用するメリット1:補助金が利用できる

大規模木造国産材を活用するメリット2:ウッドショック等のリスクに強い

大規模木造国産材を活用するメリット3:木材の「地産都消」が鍵

大規模木造に最適なSE構法でも国産材を使用できる

大規模木造SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

非住宅建築物の木造化、木質化の流れ

非住宅建築物の木造化、木質化の流れ

「SDGs」「脱炭素」「ESG投資」等への関心の高まりもあり、「木造化」の流れがより加速しています。

国内で「木をより積極的に使用する」ことが重要になります。そこで注目されるのが国産材です。国産材を活用することは、林業、建設業などの関連分野を成長させる機会ともいえます。

日本は2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)、2030年度までに2013年度比で46%削減する目標を打ち出しています。

森林は二酸化炭素を吸収し、森林からつくり出される木材は燃やさない限り炭素を貯蔵し続けます。

森林と木材の果たす役割は大きいです。国産材には輸入材の単なる代替ではなく、未来につながる価値を持たせる必要があります。

身近に木材がない環境で育つと、木に対する愛着や意識は生まれませんし、材料への関心は持てません。特に非住宅建築に木材を使う取り組みの意味は大きいです。

木材活用の意義や方法を発注者に発信し、カーボンニュートラル実現の大きな目標に向かって取り組みを進めていくことが求められています。

関連記事:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由

 

大規模木造において国産材で注目される理由

大規模木造において国産材で注目される理由

住宅・建設業界では、国産材を利用する動きが拡大しています。背景には「木造化」の流れや、近年の改正建築基準法で木造建築の耐火関連基準等が見直されたことなどがあります。

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

林野庁の統計によると、日本の木材自給率は、90%前後だった1960年ごろをピークに、安価な輸入材が拡大したことで急低下しましたが、以降徐々に回復し、2019年の自給率は37.8%となりました。

木材自給率

住宅・建設業界の動きとしては、「大手建設会社」と「大手ハウスメーカー」の業務提携なども進んでいます。木造の中・大規模建築物の市場が成長し、結果として国産材利用の促進も期待されています。

大手建設会社が保有する中・大規模建築の設計・施工技術と、大手ハウスメーカーが持つ木質材料の調達力と木造建築に関するノウハウを融合することで、木が持つ温かみや柔らかさを生かした非住宅建築物(大規模木造)の普及が予想されます。

このような協働は、木材利用を促進することで環境負荷低減にも貢献します。国産材は安全・安心といった観点でも信用度が高いことから、国産材を中心とした木材利用を広げていくことが長期的な視点においても重要です。

 

国産材の現状と抱える課題

国産材の現状と抱える課題

日本の森林資源は、戦後の木材需要を満たすために大量に消費され、一度は枯渇しかけました。現在、日本の山に育っている豊かな人工林は、その頃に先人たちが植林し、再生したものです。その半数が今、一般的な「主伐期」である50年を超えて活用の時期を迎えています。

森林資源は、適切に管理すれば再生可能で、永続的に活用することができます。資源の少ない日本にあって、森林資源はとても大きなポテンシャルを持っていると言えます。

実際、建築分野での国産材の需要は伸びています。人工林が育ってきたことなどを背景に、2000年頃から間伐材の活用が増え始めました。特に需要が伸びたのが「合板」です。

「日本の木は使われるのを待っている」状態が続いています。現在、人工林の齢級別面積では、切り時の目安とされる10齢級(約50年)以上の人工林が全体の約半分を占めています。

国内の人工林の約7割を占めるスギ・ヒノキの多くは伐採期を迎えています。その森林蓄積は、この50年間で倍増しています。まさに、「木は使われるのを待っている」のです。

人工林の半数以上を占める50年生を超える木が「伐り時」を迎え、使われる先を探しています。

関連記事:ウッドショックが顕在化させた木材供給リスクと国産材の課題

 

国産材活用の鍵となるのは大規模木造

国産材活用の鍵となるのは大規模木造

計画的な森林資源の再生・循環のためにも、建築分野でもより多くの国産材を活用していくことが求められています。

建築分野で国産材の需要を拡大するには、これまでほとんど木造でつくられてこなかった「低層非住宅」や「中層建築」の推進が不可欠です。

現在、木材の多くは木造住宅で使われています。しかし、これから少子高齢化と人口減少が進むに連れて新築住宅の需要は低下すると予測されています。

そのとき木材需要で期待されるのが、低層非住宅や中層建築の分野です。住宅とそれほど技術的な違いのない低層非住宅や中層建築は鉄骨造が圧倒的多数を占めていますが、環境やコスト、施工性等を考慮すると、低層非住宅や中層建築の木造化が求められています。

新築住宅の減少が予測されるだけに、これまで木造を主体としてきた設計事務所や工務店にとっても、低層非住宅や中層建築は重要な市場になる可能性があります。

店舗や事務所、倉庫などでは、住宅にはない大スパンの空間が必要とされることがあります。そうした空間でも一般流通材の構造材で設計・施工することは可能です。

木材供給側も、非住宅分野に力を入れはじめています。例えば、プレカットメーカーの間では最近、非住宅で使われる木材を想定した加工機械の導入が急速に進んでいます。乾燥技術も進化しており、非住宅に対応できる環境は全国で整いつつあります。

関連記事:店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由

 

大規模木造における国産材活用の鍵はJAS構造材

大規模木造における国産材活用の鍵はJAS構造材

設計者や施工者がある規模以上の中・大規模木造を建てることになると、木造でも構造計算が必須となります。

構造計算の必要な中・大規模木造では、品質が明確なJAS構造用製材が有利です。木材製品のなかでも製材は最も多く使われている身近な存在ですが、JAS(日本農林規格)の規格に基づくJAS製材の割合はまだ低いのが現状です。

製材のJAS構造材が少ない要因はいくつかあります。最も大きな要因は、これまでは木材の強度性能を明示しなくても設計できる木造住宅が中心だったことにあります。

しかし、これから低層非住宅をつくるようになると、木材の強度性能が明示されたJAS構造材を使うほうが、経済性や設計の自由度の面で有利になる可能性が十分にあります。

JAS構造用製材を使うメリットは建築物の構造計算に使用される基準強度が与えられていることが大きな利点です。目視等級区分、機械等級区分それぞれについて、樹種と等級に応じ、圧縮、引張、曲げなどの基準強度が国土交通省の告示で定められています。

性能がはっきりしているので、設計時に材料を選ぶ際、適材適所で等級を使い分けることもできます。そのことは、設計の自由度を高めることにもつながります。

機械等級区分によるJAS構造用製材に対し、製造事業者や設計者などの実務者の関心が高まっています。

関連記事:JASとは「日本農林規格」。JAS構造材の基礎知識

 

大規模木造で国産材を活用するメリット1:補助金が利用できる

大規模木造で国産材を活用するメリット1:補助金が利用できる

施設の事業計画を考える上で、オプションとして補助金の活用があります。木材活用については国も積極的に補助事業に取り組んでいます。

木造建築に対する関心は、社会的に高まっています。公共施設に限らず、民間の建物も発注者の意向で木造を検討するケースが増えてきています。非住宅建築の木造化を進めるため、あるいは新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた対策として、中・大規模木造で活用できる助成金が発表されています。

中・大規模木造で注目されている助成金の一つとして「JAS構造材個別実証支援事業」があります。

JAS構造材個別実証支援事業とは、JAS構造材を活用する実証的な取り組みに対し、その木材の調達費の一部を助成する仕組みです。

JAS構造材個別実証事業を利用するには、建築事業者等が低層の戸建て住宅を除く建築物(施主が国以外)において、構造部分にJAS構造材を利用することを通じて、設計、調達、施工時等におけるJAS構造材の利用に関する課題の抽出、改善策の提案などを行う必要があります。

全国木材組合連合会より、各年度ごとに【JAS構造材個別実証支援事業】の公募されています。令和2年度より、対象物件・材料が追加されており、より活用し易くなっております。(現在は申し込みを締め切っております。)

東京都などの地方自治体も独自の補助金・助成金を設定しており、非住宅建築物の木造化、木質化は年々実行しやすい状況になっています。

関連記事:東京都のWEBサイトの関連ページ

 

大規模木造で国産材を活用するメリット2:ウッドショック等のリスクに強い

大規模木造で国産材を活用するメリット2:ウッドショック等のリスクに強い

2021年6月現在(本コラム公開時)、住宅・建築業界、そして林業界では「ウッドショック」により大きな混乱が起きています。

世界的に木材需要が伸び、その結果として木材価格が急騰したことが要因です。そこに海運業界のタイトな物流事情も加わりました。かくして世界中で木材の奪い合いが始まっています。

木造の設計は、木材を「適材適所」で使用することが基本ですが、ウッドショックのような事態は、設計そのものに関わることになりますので、注意が必要です。

将来的には、木造住宅や中・大規模木造で用いる梁材や柱材などの部材を、国産材を使って安定価格で安定供給できる体制の構築こそが、ウッドショックのような木材供給リスクの再発防止のためには欠かせません。

国産材のメリットとしては、世界的な木材需給による相場変動のリスクを受けにくいことです。国内の材料で調達できるため、ウッドショックのような外的要因に強いとも言えます。

日本の木材を活用することで林業の活性化を促し、木造住宅や中・大規模木造を建設するための安定供給体制を構築するため、国産材へのシフトをより強化していくことが求められています。

関連記事:【激震】ウッドショック!木材価格高騰の理由

 

大規模木造で国産材を活用するメリット3:木材の「地産都消」が鍵

大規模木造で国産材を活用するメリット3:木材の「地産都消」が鍵

木造の設計は適材適所が理想ですが、材料に関しては「地産地消」が理想です。

課題として、森林資源が豊かな地域は、建築需要が少ないです。地産地消と言って各地で木材活用に取り組んでも、すでにかなり木造の建物を建ててしまい、限界に近づいています。

そこで、今後需要を伸ばすには、本格的な「地産都消」が必要です。

考え方としては、全国の主要都市での地産都消です。地産都消と言っても、大消費地となるような都市圏は、それほどありません。遠くの都市まで運べば、輸送費がかかり、建設コストに影響します。

原木の調達から加工、乾燥、製品化までを一貫してこなし、主要都市に供給する体制を整えるという考え方です。現状は、特定の木質建材をつくる工場が、近隣の自治体に複数集まっている一方で、全く工場がない地方があります。

一般流通材を使う低層木造建築は、地域の工務店などでつくれます。一方、中層で大型の都市木造は、組織設計事務所や建設会社(ゼネコン)の領域ですが、十分な担い手がいないのが現状です。

都市木造は、伝統木造や在来工法の木造とは異なる新しい木造です。LVLやCLTなど、新しい木質建材もつくられています。地産都消を目指して都市木造を普及させるには、伝統などにこだわらない姿勢も必要です。

また、コスト最優先ではなく、魅力的な都市木造を社会に示していくことも、木造の普及には欠かせない要素です。

関連記事:木造4階建てのSE構法の事務所ビルの事例紹介「ヤマサ製菓ビルハピア豊橋」

 

大規模木造に最適なSE構法でも国産材を使用できる

大規模木造に最適なSE構法でも国産材を使用できる

SE構法でも構造材に国産材を使うことは可能です。標準の構造材は輸入材のオウシュウアカマツですが、国産のカラマツも対応可能です。

現在、SE構法は、国産材のスギの構造用集成材を加える準備も進めています。公共建築物など地域材活用に対応できる体制にしていく予定です。

構造材は材種、樹種、強度、制作可能サイズ等様々あるため、構造材の特性を知った上で「適材適所」で使い分けることがコスト管理では重要です。

事前にそれぞれの特徴を知ることで、コストパフォーマンスの高い計画が可能となります

大規模木造を設計するのに使い勝手がよい(コストと強度のバランスがよい)のは、構造用集成材を用いた構法です。

大スパン・大空間が求められる大規模案件においては、設計、供給、施工、コストパフォーマンスの良さが、高い次元で成立している工法が求められます。

SE構法は、計画から設計、材料供給、加工、施工までをワンストップで提供できる仕組みです。

関連記事:【解説】大規模木造に最適なSE構法の設計ポイントまとめ

関連記事:大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント

 

大規模木造をSE構法で実現するポイント

大規模木造として店舗をSE構法で実現するポイント

大規模木造をSE構法で計画する場合のポイントは下記です。

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる大規模木造を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

木造の設計は、木材を「適材適所」で使用することが基本ですが、ウッドショックのような事態は、設計そのものに関わることになりますので、注意が必要です。

大規模木造での国産材活用は、新たな建築材料として捉え直すことはも必要です。意匠としての木造の新しい魅力や、木造で建築することの新たなメリットを発見する機会にもなります。

木材は自然材料で、その種類や性能には限界があります。ある木材をどこでどのように使うか、どのような大きさや長さまで加工可能か、どういった加工は容易でどういった加工は大変なのかといった情報も必要です。設計はできるがコストが大幅にかさむ、あるいは調達、納期等が実現不可能という事態を避けるためです。

 

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、構造設計から材料調達までを考慮した合理的な計画が可能です。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、ウッドショックでお困りの方もお気軽にお問い合わせください。