歴史ある城下町の一角に開発された住宅地に相応しい、切り妻屋根を持つT様邸。家族4人で延べ床面積140平米という、ゆったりとしたつくりだ。その余裕のある空間をを存分にいかすべく、間仕切りはほとんどない。
水回りはほぼ一ヶ所に集められ、LDKは仕切りのない大空間であるし、隣接する和室も、引戸を開けばさらに広がりを感じる一室空間となる。
さらに、吹き抜けがあることで、横方向だけではなく縦方向にも開放されている。また、この吹き抜け空間が開放感溢れるのは、それを支える柱がLDK に存在してないからではないだろうか。
見通しが良すぎるほどのこの空間は、SE構法ならではのそれである。
そして、この吹き抜けを持つ一階を明るい空間にしているのが、上部に設けられたトップライト。住宅密集地において、プライバシーを確保しながら光を取り入れるのは、なかなか容易ではない。
中庭を設ける事も考えたということだが、コストと室内温熱環境のデメリットで採用せず、中庭というアイデアだけを取り入れて、この吹き抜けプラストップライトという案になったそう。
そう、ここは、屋内空間でありながら中庭なのである。これは、日本の厳しい住宅設計環境の一つの解と言えるのではないだろうか。
二階は、寝室と書斎。それにホールという構成である。書斎には扉が2つ設置されており将来は二室に区切ることも出来る。区切ることで各スペースは小さくなるが、ホールを広く作ってあるので、そこをスタディールームとして使う事も想定。吹き抜けに面する手すり部分を利用した本棚は、家族の図書スペースとして活躍しそうだ。
この家は、空間としては実にシンプルに作られている。だからこそ、経年による間取りの変化にも対応できる、長期的に住み続けることが想定された設計である。
また、このような自由な発想を支えることが出来るのがSE構法であり、そのメリットを十分に意識して享受できる計画である。
設計
住和一級建築士事務所
施工
株式会社住和 / http://www.jyuwa.co.jp