今回紹介するのは、神戸市上津台のニュータウン建設にあたって、斜面が広がるヘタ地(開発が難しい土地)となってしまった場所に立つ、ユニークな試みの住宅だ。
「里山住宅博」と名付けられた一体の住宅群は、土地を購入した各工務店が、建築協定を定め、決められたデザインコードを守って設計されたものだ。宅地化しにくい斜面地はすべて居住者の共同所有とし、里山として環境形成をしていこうという斬新な提案も込められている。
この企画に参加したd+bアーキテクチャーの木内さんは、いくつかの土地から正面に山が望める区画を選び、眺望をコンセプトとした「南北に抜ける」プランニングを考えた。
まず、1階の南東側に朝日が入るダイニング。ダイニングには土間を隣接させて、そこで朝食をとることもできる拡張性をもたせた。ダイニングの北側にはリビングを配置し、窓から見える庭を整備した。南北にまっすぐ開口を設けることで、心地よい自然の風が通る。
寝室と子ども部屋のある2階においても、南北への抜けが重視され、幅の広い廊下がわたっている。床の一部を格子状であるグレーチングにすることで、北側のリビングにも自然光が入るしくみだ。
里山を共同所有するという独創的な住宅地で豊かに暮らすには、この環境をしっかり享受すること。設計者のブレない考えが、隅々に詰め込まれている住宅である。
設計・SE施工
d+bアーキテクチャー株式会社 / http://www.d-b.co.jp/