「FUNAOモデル」は、岡山県倉敷市に完成した建売住宅である。設計施工を担当したネクサスアーキテクトの中藤さんは、国の基準に則っているだけでは快適な家はつくれないと悟り、住宅を数値上の性能で見ず、快適さの基準を体感に求める方針に切り替えた。
その概念に当てはまるのが、パッシブデザイン住宅だ。パッシブデザインとは、自然の風や太陽の熱を効率よく利用することで、エネルギーやコストをかけず、快適に暮らす設計のことである。快適性を実現するには、土地の特性や風と太陽の動きを熟知することが求められる。
当時新しい考え方だったパッシブデザイン住宅の心地よさを体感してもらうため、中藤さんは実際にこの「FUNAOモデル」を建てた。間取りは自然のエネルギーを取りこむため、次のように考えられている。
住宅の東側から卓越風を取り込めるよう南側に建物を寄せ、北側は駐車場に。西側にはパッシブウォールという壁を設け、建物との間に風を招き入れ、南側にはその壁と連携するバルコニーを設けた。地面には大きめの砕石を敷き、打ち水をすればより涼しい風が各所のウィンドキャッチャーなる窓から入る。
リビングの南側の階段の奥には畳コーナーがある。その天井をやや低くすることで、LDKまで自然光を取り込むことが可能となった。
夏の暑さと冬の寒さを和らげる間取り計画は、多くの顧客の共感を得て、全戸完売したという。これからの環境にマッチする住宅が受け入れられた証拠である。