N邸の主要テーマは、敷地のポテンシャルを生かして豊かな眺望を確保すること。それには隣家の屋根が視線を遮らないよう床面の高さを調整する必要があり、LDKは3階へ。夫妻は建築前に現地で高さを確認するなど、徹底して準備を重ねた。
景色を眺めるには大きな開口も欠かせない。夫妻は当初、ハウスメーカーに相談したが要望が叶わず、木造で大空間・大開口を作ることができるSE構法に行き着いた。LDKの開口部は、高さが4.0mで間口は5.3mにおよび、開口部の先には広々としたルーフバルコニーを連続させた。バルコニーの手すりは視線が抜けるガラスとし、室内にいながら窓いっぱいに景色を見渡せる開放的感がある。
内側の空間計画は、ホテルのインテリアデザインを専門とするヤズインターナショナルが手がけた。珪藻土で仕上げた壁面、LDKの柔らかな曲線のアルコーブなどのハードから、天然木のダイニングテーブル、照明器具などのソフトまで、生活感を排除したホテルライクな居住環境を実現させている。
外観もひと味違う。インナーガレージ、ゲストルーム、書斎のある1階はタイル貼り、子供室や寝室が位置する2階はルーパーで外部からの視線を調整し、3階はジョリパッドの左官仕上げで独自の趣を加えた。
N夫妻は、現在の住宅を新築するまで、別の土地を購入・売却するなどの紆余曲折を経ているが、納得のいく家づくりを進めた結果、唯一無二の住宅を完成させることができた。