
こちらの住宅は、アオゾラコウムテン一級建築士事務所の代表取締役である戸田さんの自邸だ。かねてから憧れであったアメリカンミッドセンチュリー住宅のスタイルを元に、日本にも馴染む住まいを実現させた。
戸田さんが昔から注目していたのは、第二次大戦後のカルフォルニアで創業し、宅地開発と供給を行ったEICHLER HOMESの住宅計画。一万棟を超えるというEICHLER HOMESの設計した家には、共通のデザインコードが見られ、それは平屋という形態、緩勾配の屋根、閉鎖的な外観と中庭から自然を取り入れるプランニング、柱や梁をあらわしにした直線的なデザインなどが顕著である。戸田さんはそれらの要素を取り入れ、建材やインテリアに至るまで徹底して再現した。

東側の道路から敷地へ入り、向かって左側がインナーガレージ、中央のガラス戸付きのドアを入ると中庭を経て玄関に至る。この玄関アプローチを兼ねた中庭を囲むように和室とLDKが配置され、窓からおだやかな光と風が取り込める仕様だ。平屋だが天井は高く開放的で、和室を除いた各部屋には高窓が設けられている。深い色合いの木が主役となった躯体や建具は、独特なレトロな味わいがある一方で、広々とした柱のないLDKは、現代の構造技術であるSE構法で実現したものだ。この住まいは、デザインのビジョンを細部まで具現化するうえで、SE構法がいかに有効かを示す好例であり、同構法は具体的な住宅イメージを持つ施主にとって、理想の形を叶える手段となることを示している。