木造建築.jpは移転しました。

このメッセージは木造建築.jpにアクセスいただいた方に向けて表示しています。

耐震構法SE構法で建てる大規模木造建築のサイトをご覧いただきありがとうございます。木造建築.jpは、2017年4月のリニューアに際して現在表示中のURLに移動しました。旧サイトをブックマークされている方は、お手数ですが新しいURLをご登録いただきますようお願いします。

株式会社エヌ・シー・エヌ

このメッセージを閉じる

SE CONSTRUCTION耐震構法SE構法

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」

  • SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」 -

木造は、幼児施設(幼稚園・保育園・認定こども園等)に求められる設計に対応しやすい工法です。幼児施設を計画する際に、鉄骨造や鉄筋コンクリート造ではコストや工期に対応できない場合は、中大規模木造として計画することが有効な選択肢となります。幼稚園は地域で求められる施設でもあり、幼児や職員さんなどが長時間過ごす空間でもありますので、愛着を感じやすい木造建築は適していると言えます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる幼稚園を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。このコラムでは木造の構造躯体にSE構法を採用した幼稚園の事例紹介をしながら、意匠計画やSE構法の構造設計等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

SE構法幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の概要

SE構法幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園意匠設計の特徴

SE構法幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園構造設計の特徴

SE構法木造耐火幼稚園を実現するための注意点

幼稚園木造が適している理由

SE構法幼稚園に適している理由

大規模木造として幼稚園SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の概要

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の概要

「聖美幼稚園」は、400人近い幼児が通園する、地域でも人気の幼稚園です。特徴として体操や絵画をはじめとする課外活動に熱心で、地域に解放されたバレエ教室なども開いています。

その増築工事が木造の園舎として計画されました。今回の増築工事では、保育室などが入っていた南園舎と遊戯室棟を解体し、これらの機能を集約した「西園舎」が新設されました。

 

<「聖美幼稚園(増築工事)」の概要>

・用途:幼稚園

・構造:木造(SE構法)

・階数:2階建

・延床面積:842.83㎡(増築部分)

 

幼稚園は、建築基準法上「学校」に分類され、法27条による特殊建築物です。幼稚園を計画する際に注意すべきことは、建築基準法以外にも学校教育法の「幼稚園設置基準」を満たす必要があることです。幼稚園における建築基準法の規定の詳細については下記の記事をご参照ください。

関連記事:木造で幼稚園を計画するための関連法規まとめ

 

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の意匠設計の特徴

幼稚園の場合、2階に保育室、遊戯室など幼児が使用する居室を設置する計画では、幼稚園設計基準により「耐火建築物」とすることが求められるため、「木造耐火」の仕様を満たす必要があります。

新たに建設された西園舎は、敷地の西側に建物を寄せてなるべく広い園庭を確保しつつ、大きな二本の既存樹木を抱くように、コの字型の平面形状になっています。

建築計画のテーマとしては、半屋外空間を介した室内と園庭のつながりを意識した設計となり、幼児にとって活動しやすい幼稚園となっています。

意匠設計のポイントは下記です。

メインのファサードは入・卒園時にこの園舎を背景に記念撮影することもふまえ、既存の樹木やレリーフを生かしつつ正面性を意識した外観デザイン

・メインのファサードは、入・卒園時にこの園舎を背景に記念撮影することもふまえ、既存の樹木やレリーフを生かしつつ正面性を意識した外観デザインになっています。

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の意匠設計の特徴

・1・2階の保育室や特別室の外に半屋外のテラスや回廊を回し、室内から直接外に出られるようにしています。

・2階の外壁面からピロティとしてセットバックしている1階部分は、保育室などに面する外壁面を黒く塗装して、白い2階部分との違いを示しています。

2階の回廊の天井面には透明な素材を用いて外光を取り入れて明るい半屋外空間を実現

・2階の回廊の天井面には、透明な素材を用いて外光を取り入れて、明るい半屋外空間を実現しています。

2階の回廊の外壁には、円や四角の開口

・2階の回廊の外壁には、円や四角の開口を設け、回廊を歩きながら多様な園内の景色をのぞけるようになっています。

2階南端には多目的に利用できる遊戯室

・2階南端には多目的に利用できる遊戯室を設けています。勾配天井で梁間9mの大空間です。天井の棟まわりに直線状のトップライトを設けて、室内に均一の光を取り込んでいます。

・遊戯室の床は、クッション機能を備えたビニルシートで仕上げて、バレエなどの利用時にも膝に負担がかからないようにしています。

・上下間の遮音にも配慮した設計、仕様になっています。2階建の幼稚園ということで、1・2階に遊戯室や保育室を配置していることから、下階の天井裏にグラスウールを施し、上階の床は2枚重ねにした強化石こうボードなどの上にダンパーと鋼製下地を組み合わせて遮音性の高い仕様としています。

1階の視聴覚室や保育室等は石こうボードで覆った梁まわりと天井面に段差を設けて視覚的な広がり

・2階の大空間等を優先して1階の階高を抑えているため、1階の視聴覚室や保育室等は石こうボードで覆った梁まわりと天井面に段差を設けて視覚的な広がりを与えています。

・2階の保育室は、園庭に向けて高くなっている勾配天井となっており、開放的な空間になっています。

関連記事:耐震構法SE構法のプランニングがうまくいく設計の考え方を徹底解説

 

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の構造設計の特徴

SE構法の幼稚園の事例紹介「聖美幼稚園」の構造設計の特徴

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。

SE構法であれば、幼稚園で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

SE構法は、許容応力度計算に加えて偏心率のバランスを考慮した構造設計を行なっておりますので、外壁(耐力壁)の位置も意匠のデザインに合わせて決定することができます。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。

今回の幼稚園におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

2階南端には多目的に利用できる遊戯室

 

1.SE構法で実現する木造の大空間

2階の遊戯室は間口9m×奥行16.2mの大空間です。6寸勾配の切妻形状の勾配天井となっています。断面が450mm×120mmの大梁をダブル(2本抱き合わせ)として山型ラーメンのようなフレームを桁行方向に2.7m間隔で設置することで、この大空間を無柱空間として実現しています。

 

2.SE構法のスペックにより実現できた意匠と構造の整合性

2階の遊戯室の大空間に対して1階は東側に奥行5.4mのピロティーがあるなど、意匠と構造の整合性をとるためには複雑な設計になっています。遊戯室まわりでは、妻側の2階床の大梁の梁せいを750mmとするなどして、1階ピロティーの開放性を実現しながら構造を成立させるために耐力フレームを構成して対応しています。

 

SE構法は、許容応力度計算に基づく構造計算を全棟実施しておりますので、設計内容に応じた構造設計が可能です。

関連記事:中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計

 

SE構法で木造耐火の幼稚園を実現するための注意点

SE構法で木造耐火の幼稚園を実現するための注意点

木造の耐火建築物は、耐火要件を満たすために使用する石膏ボードの量などが大幅に増えることもあり、建物の荷重は通常の木造よりもかなり重くなります。

設計の注意点としては、建物重量が重くなることから耐震性能の確保が難しくなったり、耐火被覆材の貫通、穴あけが制限されたりしますので、早い段階から構造設計、設備設計とのすり合わせが必要です。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法では表面に凹凸加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。

SE構法はそうした構造スペックにより、荷重が重くなる木造の耐火建築物にも対応できます。

敷地の大きさや運用の考え方などでどうしても2階に保育室、遊戯室を設置しなくてはならない場合はやむを得ませんが、工期やコストを考えるとなるべく幼稚園は「保育室、遊戯室は1階」に計画して準耐火建築物で設計することがベターとなります。

 

幼稚園に木造が適している理由

幼稚園に木造が適している理由

木造が幼稚園に適している理由は下記です。

 

1.木造は減価償却期間が短い

木造は減価償却期間が鉄骨造より短く設定(鉄骨造34年、木造22年)されており、建物を所有する事業者にとっては、年間の経費をより多く計上することができ、節税効果を得ることも可能です。

幼稚園ではライフサイクルコストも重要であり、計画から解体工事までをトータルで考える必要があります。

木造の22年という減価償却期間は、税法上の法定耐用年数をもとに設定されており、必ずしも実際の建物の寿命とイコールではありません。現代の木造建築ではメンテナンスを適切に行うことで更に長期に使用することも可能です。

関連記事:店舗、事務所、倉庫を木造で計画するメリット

 

2.木造はSDGsや脱炭素社会、ESG投資に対応しやすい

SDGsの急激な浸透もあり、カーボンニュートラルな社会への転換は世界の共通課題です。脱炭素社会実現のための課題解決に向けた取り組みが、これからの施設建設にも求められています。脱炭素社会に向けて、施設の木造化・木質化は推進する要素の一つになります。

木造は建築時に炭素排出が少なく、木は炭素を固定し貯蔵する特性があるなど、「地球環境に優しい工法」として注目されています。

近年、「環境社会、企業統治の要素を考慮する(ESG投資)」が強く意識されるようになりました。

民間で建設する建築物で木造化、木質化を図ることは、こうした流れにそうものとして評価されていくことが予想されます。木造化・木質化には、地球温暖化防止と持続可能な森林経営の下支えという二重の意味を持ちます。

関連記事:大規模木造とSDGs・脱炭素・ESG投資の相性が良い理由

 

3.木造は建設コストが安い

木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の構造より建設コストが安く、事業者もしくはテナント契約者の双方にコストメリットが働く可能性もあります。

木造と鉄骨造で使用する建材を部材ごとに比較しても、規格寸法があるアルミサッシなど、ほとんどの建材が木造のほうが安くなります。

基礎の断面寸法が鉄骨造と比較してとても小さいことから、基礎工事の材料費、施工費、残土処分費なども大幅に軽減できます。建物重量がとても軽くなることから、地盤改良コストも抑えることができます。

設計に関しては、木造のモジュールを意識した設計とすることで、材料の歩留まりがよくなり、施工手間が軽減されることで、結果として建設コストが安くなります。

関連記事:中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント

関連記事:中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方

 

SE構法が幼稚園に適している理由

SE構法が幼稚園に適している理由

SE構法が幼稚園に適している理由は下記です。

 

1.工期が短いため事業に対応しやすい

幼稚園の事業を実現するには、短工期に対応する必要があり、そのために最も適した工法が「木造」になります。

NCNが提供するSE構法は、一般に流通している構造用集成材を採用している工法のため、原則構造材発注後60日程度で構造材を現場に搬入することが可能です。(特注材の有無や社会情勢等により変動がありますので計画時にお問合せください)

構造躯体の加工は全て提携するプレカット工場で加工後に現場に搬入しますので、工事着工から建て方まで短期間にスムーズに進められます。

関連記事:補助金事業には木造がベスト!木造がRC造やS造より工期短縮できる理由

 

2.耐火建築物・準耐火建築物に対応しやすい

幼稚園を木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

幼稚園では、階数や規模により建築基準法で「耐火建築物」とすることが求められることがあります。「木造耐火」の仕様を満たす必要がありますが、木造(SE構法)でも「耐火建築物」の対応は可能です。

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

幼稚園のように低層の建築は、計画内容を整理し、可能ならば準耐火建築物の仕様で設計することができると、耐火建築物と比較してコストパフォーマンスの高い木造建築が実現できます。

関連記事:木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

3.木造建築は人や環境に優しい

木の温かみ、香りは人の気分を和らげてくれる沈静作用があります。木はやすらぎと心地よさをもたらしてくれる優しい材料です。

教育施設の調査において木材利用は、子ども達のストレス緩和、集中力の向上、インフルエンザや怪我の抑制効果などの報告があり、木造の建物は健康にも優しい建築物です。

関連記事:中大規模木造は人や環境に優しい理由

 

大規模木造として幼稚園をSE構法で実現するポイント

大規模木造として店舗をSE構法で実現するポイント

幼稚園をSE構法で計画する場合のポイントは下記です。

 

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

木造の幼稚園では、構造強度の高い金物工法を採用することが必要です。SE構法であれば幼稚園で求められる保育室や遊戯室などスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

また耐力壁をなるべく外壁に確保して内部の耐力壁を最小限に抑え、内部の非耐力壁を間柱で構成することで、間取りの変更などが行いやすいメリットもあります。

幼稚園のような用途の建築においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。

SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。

計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。