地震と住宅の新常識

地震に強い家の秘訣は「耐力壁」にあり!種類と性能・配置方法に迫る

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地震に強い家の秘訣は「耐力壁」にあり!種類と性能・配置方法に迫るのインデックス

地震に強い家の建設を検討しているとき、耳にするのが「耐力壁」という単語。地震の揺れに抵抗し、建物の変形や倒壊を防ぐ上で欠かせない存在ですが、さまざまな種類があり性能や特徴が異なることをご存知でしょうか。また耐力壁は量を確保することも大切ですが、配置バランスでも効果が変わってくるため、配置を考えるときのポイントについても知っておきたいところです。
今回は耐力壁の種類と性能、そして最適な配置方法のポイントについて詳しく解説します。地震に強い家を建てたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

耐力壁の種類とそれぞれの性能

耐力壁の種類は、大きく分けて「筋交いが入ったもの」と「耐力面材を打ちつけたもの」の2種類があります。それぞれの特徴や使用場面を見ていきましょう。

筋交い

木造軸組工法(在来工法)でよく採用されているのが、筋交いを使った耐力壁です。筋交いとは、縦横に柱や梁を組んでできた四角い枠の中を、斜めに補強する部材のことをいいます。斜めの材を入れることで、四角い枠に横から力を加えたときに、平行四辺形のように歪むのを防ぎます。
筋交いを1本取り付けた「片筋交い」のほか、Xになるように2本筋交いを取り付けた「たすき掛け」などの種類もあり、それぞれ強さが異なります。
筋交いの場合、耐力面材よりも材料費を抑えられるのがメリットです。ただし筋交いを固定している両端に局所的な負荷がかかりやすく、大きな地震などがくると筋交いが折れたり外れたりする危険があります。

耐力面材

柱や梁でできた枠に構造用合板を釘留めして耐力壁をつくる方法もあります。面全体で力を受け止めるので、筋交いのように局所的に大きな力が加わることがなく、構造体に負荷がかかりにくいのが大きなメリットです。また壁いっぱいに断熱材を入れられるので、建物の断熱性能も上げやすいでしょう。
耐力面材のデメリットは、価格の高さ。通気性が悪いので内部結露を起こしやすいと言われることもありますが、これは耐力面材として採用される素材次第です。通気性がよく、内部結露を起こしにくい素材もあります。

耐力壁の強さは「壁倍率」で表される

どのような筋交いや耐力面材が入っているかによって、耐力壁の強度は異なります。そのため建築基準法施行令では、耐力壁の強度を表す数字「壁倍率」が定められています。筋交いのサイズや本数、耐力面材の種類などによって壁倍率0.5〜5.0の間で設定されており、耐力壁の量などを検証する際にも使用します。

木造における代表的な耐力壁と壁倍率

種類 壁倍率
筋交い 厚さ1.5cm以上・幅9cm以上 1.0
(たすき掛け2.0)
厚さ3.0cm以上・幅9cm以上 1.5
(たすき掛け3.0)
厚さ4.5cm以上・幅9cm以上 2.0
(たすき掛け4.0)
9cm角以上 3.0
(たすき掛け5.0)
弾力面材 0.5〜5.0

 

構造用合板の場合は国土交通大臣の認定が必要で、壁倍率は0.5〜5.0の範囲内で定められます。筋交いと耐力面材を併用した場合は壁倍率を合計でき、上限は5.0です。筋交いと耐力面材を併用すると壁倍率は高くなりますが、壁が分厚くなり居住スペースを圧迫するというデメリットもあります。

地震に強い家をつくる耐力壁の配置方法

では地震に強い家をつくるには、どのように耐力壁を配置すればよいのでしょうか。ここでは大きく3つのポイントに分けて解説します。

ポイント1.耐力壁の量を確保する

十分な建物強度を保つには、耐力壁の量を確保することが大切です。X方向とY方向のそれぞれに対し、地震と風に抵抗できる量の耐力壁を配置します。

ポイント2.平面的にバランスよく配置する

耐力壁は量を増やすだけでなく、バランスよく配置することも重要です。一箇所に集中して耐力壁が配置されていると、地震などの水平力が加わったとき、建物がねじれるような力が働くからです。ねじれに耐えきれないと、建物が倒壊する恐れもあります。
耐力壁の平面バランスは、四角い建物のコーナー部分を耐力壁で固めるのが基本です。そのうえで全体的なバランスや住まいの使いやすさなどを考慮して、耐力壁を増減させたり移動させたりします。

ポイント3.立面的にバランスよく配置する

耐力壁のバランスは、平面だけでなく立面的に見ることも大切です。上下階の耐力壁の位置が揃っていないと、力がスムーズに流れていかず、どこかに大きな負担が生じてしまいます。実際に上下階の耐力壁のバランスが悪い建物では、地震で1階が潰れてしまうなど大きな被害を受けたという事実もあるので、注意が必要です。
間取りを考えるときには「どこにどのくらいの部屋をつくるか?」などの平面計画が先行しやすいですが、同時に立面のバランスも考慮しましょう。

耐震壁の量やバランスを確認する方法

小規模の木造住宅を建てるときは緻密な構造計算が義務化されておらず、建築基準法施行令に定められた「仕様規定」というルールに基づいて簡易的に安全性をチェックします。仕様規定の中には耐震壁の量を確認する「壁量計算」、耐力壁のバランスを確認する「四分割法・偏心率」という項目が含まれています。上下階のバランスは「直下率」で確認できますが、建築基準法には直下率に関する規定はありません。

耐力壁の量をチェックする「壁量計算」

壁の量が十分にあるかどうかを確認するのが、仕様規定の「壁量計算」です。
壁量計算では、地震と風に抵抗するためにそれぞれ必要な耐力壁を算出。設計上存在している耐力壁の量が、必要壁量よりも多いかどうかを確認します。
このとき壁の強さを考慮するために使われるのが壁倍率。耐力壁の長さに壁倍率を掛けて、壁量を算出します。

壁量計算の流れを簡単に解説!構造計算との違いや2025年の法改正のポイントは?

耐力壁のバランスをチェックする「四分割法」

耐力壁のバランスを確認するのに使われるのが、仕様規定の「四分割法」。建物平面のX方向・Y方向をそれぞれ4つに分割して、両端の耐力壁のバランスを確認する方法です。
なぜ4分割にしたうちの中央部分を検討しないのかというと、耐力壁は中央よりも外周に配置した方が水平力に抵抗できるからです。そのため四分割法では、外周から1/4の側端部分の耐力壁の長さが一定以上の比率になるかどうかを確認します。

不整形な建物のバランスをチェックする「偏心率」

耐力壁のバランスを見るのに基本的には四分割法を用いますが、建物の平面が不整形な場合は四分割法による確認がしにくいため「偏心率」を用いることもあります。
偏心率で確認するのは、建物の重心(重さの中心)と剛心(強さの中心)の離れ具合です。重心と剛心が離れていると、地震のときに建物がねじれてしまうため、偏心率がなるべく0に近づくように設計します。

上下階のバランスをチェックする「直下率」

上下階の柱や耐震壁の位置が揃っているかどうか確認するのが「直下率」です。
上下階の位置が揃っていると直下率は上がり、力の流れはスムーズになります。直下率が低いと、力が加わったときに下階の柱や耐力壁に大きな負担が生じるため、1階が潰れて倒壊するなどのリスクが高くなります。
直下率について法的な規定はありませんが、上下階の柱や耐力壁はなるべく揃うようにプランニングするのがおすすめです。

SE構法の耐力壁の強度は、一般在来工法の3.5枚分

地震に強い木造住宅の工法として注目されているのが、SE構法です。SE構法では一般在来工法の耐力壁の3.5枚分の強度をもつ、独自の耐力壁が採用されています。

 

SE構法とは?
従来はRC造などでよく使われてきた「ラーメン構造」を木造に応用した工法で、柱と梁などの接合部を「剛接合」にすることで強度を高めています。
またほとんどの二階建て木造住宅では構造計算が行われていませんが、SE構法では全棟で構造計算をするのも特徴。すべての部材の強度がわかった状態で、立体解析構造計算プログラムを用いて建物の変形やねじれ、バランスなどを検証します。

 

JAS特類1級構造用合板をCN釘で固定している

SE構法では接合部が外れやすい筋交いではなく、耐力面材の外周をCN釘で強固に固定した耐力壁を使用しています。また構造用合板には1級と2級がありますが、SE構法で使用しているのは強度の高い1級構造用合板です。また構造用合板を固定しているのはCN釘という少し太めの釘で、通常のN釘と比べてせん断力に優れています。

繰り返しの力に強いと実証されている

耐力壁で気をつけたいのが、繰り返しの力に対する強さです。一度の地震では問題がなくても、繰り返し地震で揺れるうちに筋交いが外れたり、耐力面材の釘を打った穴が広がって耐力が確保できなくなったりすることがあります。SE構法の耐力壁は釘穴が広がりにくく、繰り返しの力を受けても耐力が保たれると実証されています。

少ない壁量で耐震性を確保できる

1枚の耐力壁が3.5倍の強度をもつということは、壁を減らしても耐震性が確保できるということ。SE構法は、吹き抜けや大スパン、スキップフロアといった開放的な空間づくりをしたい場合に最適です。

強い耐力壁で地震に強い家をつくろう

地震に強い家を建てるためには、耐力壁の量や配置バランスがとても大切です。一般的な木造在来工法では筋交いを使った耐力壁がよく使われますが、筋交いの両端の接合部に大きな負担がかかりやすいというデメリットもあります。耐力面材の周囲を釘打ちした耐力壁なら、面で力を受け止めて分散させることができます。
SE構法で採用しているのは、筋交いを使わない独自の耐力壁。一般的な筋交いによる耐力壁の3.5枚分の強度をもち、耐震性の向上に大きく貢献します。少ない耐力壁でも耐震性が担保されるので、開放的な間取りにしたい方、構造的な制約が少ないなかで自由な家づくりをしたい方は検討されてみてはいかがでしょうか。

高い耐震性能と自由で大胆な空間デザインを両立する、耐震構法SE構法

SE構法は、木造住宅の構造技術です。丈夫な材料とラーメン構法による強い構造躯体と、一棟一棟に対する基礎から上部までの厳密な構造計算を行う点が最大の特長です。私たちの特長を是非ご覧ください。

SE構法とは…

株式会社エヌ・シー・エヌが開発した構法で、集成材とSE金物による堅牢な構造媒体を持ちすべての建造物に対してひとつひとつ構造計算(許容応力度等計算)を行うことで、

  • 木造でありながら地震に対する安全性
  • 壁や柱が少ない室内での「大空間」
  • 大きな窓を採用し光を取り入れる「大開口」

を同時に実現できる構法です。
(施工は全国の登録工務店でしか行うことができません。)

SE構法について
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