地震と住宅の新常識

壁量計算の流れを簡単に解説!構造計算との違いや2025年の法改正のポイントは?

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壁量計算の流れを簡単に解説!構造計算との違いや2025年の法改正のポイントは?のインデックス

日本の木造住宅の90%以上は構造計算されていないことをご存知でしょうか。実は建築基準法では小規模な木造住宅については構造計算が義務付けられておらず、その代わりに簡易的な計算方法として「壁量計算」が用いられることがほとんどです。

しかし壁量計算とは一体何なのか、本格的な構造計算とはどう違うのか知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は壁量計算とはどういう計算なのか法的な位置付けなども含めて解説します。2025年に控えた建築基準法改正にも触れるので、住宅の新築を検討中の方はぜひ参考にしてください。

壁量計算とは?

在来工法の木造住宅では、建築基準法の仕様規定を満足させるように設計します。その仕様規定のなかで重要なチェック項目のひとつが壁量計算です。地震や風の力に対して必要な「耐力壁」の量を算出して、十分な量が配置されているかを確認します。

耐力壁とは?

耐力壁とは、建物に地震や風など横からの力が加わったときに抵抗する力を持った壁のこと。縦横の柱と梁だけでなく、斜めの突っ張り棒のような役割を果たす「筋交い」や、ボード状の「耐力面材」などが入っています。壁量計算ではこの耐力壁がどのくらいの量あるかによって、建物の安全性を簡易的に判断しています。

耐力壁の強さは、筋交いの太さや本数などによって変わってくるので、耐力壁の長さだけでは強さを判断できません。そこで耐力壁の種類ごとに強度を表す数値「壁倍率」が決められており、壁倍率の値が大きいほど強い壁として扱われます。

基準となる「壁倍率1.0」は、厚さ1.5cm以上で幅9cm以上の木材の筋交いが1本入った耐力壁。例えば、この筋交いをXになるようにたすき掛けに入れると、壁倍率は2倍になります。壁倍率の上限は5.0です。

壁量計算を定めている法律

壁量計算を規定しているのは、建築基準法施行令46条「構造耐力上必要な軸組等」第4項です。建築基準法が制定された1950年に初めて導入され、1981年には必要壁量や壁倍率について大幅に見直しがされました。さらに1995年の阪神・淡路大震災で被害の大きかった住宅を検証したところ、耐力壁の配置バランスが悪かったことが判明。2000年の改正では、耐力壁の量だけでなく、配置バランスを考えた設計が必要になりました。

壁量計算の流れを簡単に解説

ここからは壁量計算の流れを、簡単に解説していきましょう。

STEP1:地震力に対して必要壁量を計算する

まずは建物の床面積から、地震力に対して必要となる耐力壁の量を計算します。地震力に関しては、床面積が大きく、階数が高いほど、必要となる壁量が増えていきます。また、軟弱地盤に建設される場合や、重い屋根材を使っている場合は、多めの壁量が必要です。

STEP2:風圧力に対して必要壁量を計算する

次に建物を横から見たときの「見付面積(各階の床面の高さから1.35m以下の部分の面積は除く)」から、風に対して必要となる耐力壁の量をX方向とY方向のそれぞれで計算します。見付面積が大きいほど風の影響を強く受けるため、たくさんの耐力壁が必要です。また、特に強い風が吹く地域では、多めの壁量が必要になります。

STEP3:存在壁量が足りているか判定する

必要な壁量がわかったら、それと比較するために設計上存在している「存在壁量」を求めます。このとき使うのが壁倍率です。耐力壁の長さや枚数に壁倍率を掛けて、存在壁量を算出します。地震力と風圧力において、各階・各方向すべての壁量が足りているかどうか確認します。

壁量計算と構造計算の違い

壁量計算は構造計算の一種と間違われることもありますが、あくまでも簡易計算であり構造計算ではありません。壁量計算は手間や費用がかかりませんが、構造計算のほうが安全度や信頼度は高まります。

構造計算(許容応力度計算)とは?

構造計算とは、建物の安全性を確認するための計算のこと。大きく分けると、次の4種類があります。

1.許容応力度計算(ルート1)
2.許容応力度等計算(ルート2)
3.保有水平耐力計算(ルート3)
4.その他(限界耐力計算・時刻暦応答解析):特殊な建築物に使用

まずは建物自体の重さ、人や家財の重さ、雪が積もったときの重さ、地震や台風がきたときにどのように力が伝わるのか、その力に各部材が耐えられるかを調べます。これが許容応力度計算(ルート1)です。

そして許容応力度等計算(ルート2)では、地震や台風がきたときの建物の傾きや、上下階の硬さのバランス、重さをバランスよく支えられるかといったことを検証。さらに大地震がきたときの安全度まで検証するのが、保有水平耐力計算(ルート3)です。

その他の限界耐力計算や時刻暦応答解析は、特殊な建築物にのみ使用します。

構造計算のほうが安全度が高い

耐震等級を取得するには、構造の検討が必要です。構造を検討するには壁量計算と構造計算(許容応力度計算)の2種類の計算方法があり、どちらを使用したかによって同じ耐震等級3でも安全度は異なります。実際に壁量計算の基準を満たしている住宅であっても、構造計算をしてみると60〜70%程度の強度しか確保されていないというケースも少なくありません。

また壁量計算で地震への強さを確保するには、筋交いを入れた耐震壁を増やす必要があります。そのため耐震性を確保するために「ここに窓をつくりたい」「広いリビングをつくりたい」といった希望が叶わなくなる可能性もあるでしょう。地震への強さと間取りの自由度を両立させたいなら、初めから構造計算をして家を建てるのがおすすめです。

壁量計算が適用できる四号建築物

本来であれば、すべての住宅で構造計算をして安全を確認したいところ。しかし現在、二階建て以下の小規模な木造住宅では構造計算が義務付けられておらず、壁量計算をはじめとする仕様規定に対応すれば建築できます。

現時点で構造計算が義務付けられていないのは、下記の項目すべてを満たしている小規模な木造住宅。この条件を満たした住宅を、四号建築物といいます。四号建築物では、建築士が設計していれば、家を建てる前の構造審査の省略も可能です。

 

四号建築物の条件
・木造2階建以下
・延べ床面積500㎡以下
・建物高さ13m以下、軒高さ9m以下
・特殊建築物ではなく、不特定多数が利用しない建物(住宅など)

 

新築で最も多い木造2階建て住宅は構造計算をしなくても建てられるため、壁量計算しか行われていないことがほとんど。さらに壁量計算などの仕様規定をクリアしているかどうか行政にチェックされることもないため、すべては建築士に委ねられている状態です。

2025年の建築基準法改正で壁量計算のルールも変わる

壁量計算は古いルールなので、現代の建築物には即していない部分もあります。そこで2025年の建築基準法改正で、ルールが変わることになりました。今まで壁量計算が中心だった住宅ビルダーでは仕事の流れが大きく変わり、計画がスムーズに進まなくなる可能性もあるため注意が必要です。

改正される項目はさまざまですが、ここからは一般的な住宅を建てる際に関係する代表的な項目について触れておきましょう。

変更点1:四号建築物→新二号・三号建築物へ

これまで延べ床面積500㎡以下の平屋や二階建ての木造住宅は四号建築物に分類され、構造審査を省略できていました。しかし2025年の改正では四号建築物という分類がなくなり、「新二号建築物」と「新三号建築物」の2つに分けられます。

 

改正前 改正後
四号建築物→構造審査不要
・木造二階建て
・木造平屋
新二号建築物→構造審査対象
・木造二階建て
・木造平屋(延べ床面積200㎡超)
新三号建築物→構造審査不要
・木造平屋(延べ床面積200㎡以下)

 

木造平屋で200㎡以下の場合、今までと同じように構造審査を省略できる予定です。木造平屋で200㎡を超える場合や木造二階建てでは、確認申請時に構造関係の書類の提出が必要になります。

変更点2:延べ床面積300㎡以上で構造計算が必要に

四号特例は縮小されますが、壁量計算がなくなるわけではありません。ただし、これまで平屋や二階建ては500㎡以下であれば壁量計算で対応できていましたが、改正後は300㎡を超えると構造計算が必要になります。

一般的な住宅は30〜40坪程度なのであまり関係がありませんが、中規模以上の建物を計画する際は注意が必要です。これまでと比べて、許容応力度計算が必要となる建物が格段に増える可能性があります。

変更点3:壁量計算の基準が厳しくなる

また2025年の建築基準法改正で大きいのが、省エネ基準の義務化です。省エネについてのルールを厳しくするということは、屋根に太陽光パネルが載ったり、断熱材が増えたりと建物の重量が重くなることも意味します。

従来の壁量計算では耐力壁が不足する可能性があるため、壁量計算のルールも厳しいものに。今まで以上にたくさんの耐力壁を設けなければ、基準をクリアできなくなります。

なお構造計算の場合、元から建物自体の荷重を算出する仕組みになっているため、今まで通りの計算で問題ありません。

構造計算を行ってきた住宅会社の業務は変わらない

2025年の改定で四号特例は縮小され、構造計算が必要な建築物の規模も変わります。これまで壁量計算のみで対応していた住宅会社は、資料作成や構造計算などさまざまな業務負担が増えるでしょう。

家を建てる方にとっては、一定以上の安全性が担保されるというメリットもある一方で、建築コストが高くなる可能性もあります。資料作成や構造計算などの業務が増える分、今までよりも価格を上げる住宅会社が出てくると予想できるからです。

ただし元から自主的に構造計算を行っている住宅会社であれば、これまでと業務内容はほとんど変わりません。価格が上乗せされる可能性も低く、今までの経験をもとにスムーズに設計や各種手続きを進めてもらえるため安心です。

壁量計算と構造計算の違いを理解しておこう

簡単に耐震性を確認できる壁量計算。しかしあくまでも最低限の目安でしかなく、壁量計算をクリアしている住宅でも、一般的な構造計算をしてみると6〜7割の強度しかないといったことも少なくありません。

地震に強い家を建てるなら、迷わず構造計算(許容応力度計算)を選ぶのがおすすめです。特に2025年以降は四号特例も縮小されるため、構造計算の知識や実績が豊富な会社に依頼すると安心です。

SE構法は壁量計算ではなく、全棟許容応力度等計算を実施。建物の上部構造だけでなく、基礎にいたるまで安全性を検証しています。ラーメン構造を採用しているため、壁が少なくても綿密な構造計算により耐震性が担保できるのも魅力。自由な間取りと安全性を両立し、理想的な住まいをつくることができます。

高い耐震性能と自由で大胆な空間デザインを両立する、耐震構法SE構法

SE構法は、木造住宅の構造技術です。丈夫な材料とラーメン構法による強い構造躯体と、一棟一棟に対する基礎から上部までの厳密な構造計算を行う点が最大の特長です。私たちの特長を是非ご覧ください。

SE構法とは…

株式会社エヌ・シー・エヌが開発した構法で、集成材とSE金物による堅牢な構造媒体を持ちすべての建造物に対してひとつひとつ構造計算(許容応力度等計算)を行うことで、

  • 木造でありながら地震に対する安全性
  • 壁や柱が少ない室内での「大空間」
  • 大きな窓を採用し光を取り入れる「大開口」

を同時に実現できる構法です。
(施工は全国の登録工務店でしか行うことができません。)

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