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WOODEN STRUCTURE中大規模木造

【真実】大規模木造は火に弱くない!防耐火に強い木造建築とは?

  • 【真実】大規模木造は火に弱くない!防耐火に強い木造建築とは? -

 近年、都市部においても木造建築が増えています。社会的な要請や建築基準法改正、技術開発の進化などにより、大規模化や高層化も進んでいます。

 大規模木造の一つの課題は「木造は火に弱い」というイメージの払拭です。決して木造は火災に弱い訳ではありませんが、歴史的な経緯や火災に関する報道のあり方などにより、発注者や関係者に不安を感じる人がいることも事実です。

 大規模木造においても、区画や避難、消火などを意識した建築計画を行い、耐火建築物や準耐火建築物等の仕様を遵守した設計を行えば、火災への対策で不利になるようなことはありません。

 このコラムでは、火災に関する真実と、防耐火に強い木造建築についてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

木造が燃えやすいのは本当か?

の特性は「ゆっくり燃えること」

大規模木造防耐火に配慮した計画する際のポイント

大規模木造の実務的課題:耐火建築物準耐火建築物への対応

大規模木造メリット事業性の高い提案が可能

大規模木造としてSE構法で実現するポイント

・まとめ

 

木造が燃えやすいのは本当か?

木造が燃えやすいのは本当か?

日本は木が豊富にあり、木造建築の長い伝統もある国です。

一方で「木造は燃えやすい」という認識を持つ人が多いことも事実です。特に先の戦争で空襲を受けて古い木造建築が燃えた事実や、現代においても都市部の火災などの記憶が多くの人に深く刻まれてきたことも理由に挙げられます。

木造建築の技術もイメージも随分と向上した現在でも、「木造建築を建てたいけど火災が心配」と躊躇される発注者も少なくないかもしれません。

実際には木造建築業界は、木造建築の防火性能について、盛んな実証試験や物理的な論理に基づいた広報活動などにより、不安の払拭に努めてきました。

木造建築物がその他の建築物よりも火災に遭いやすい、という懸念は、前述した歴史的な惨事の記憶と、木という物質がコンクリートや鉄骨に比べて引火しやすい、ということからきています。

後者は拭いようがない物理的事実ですが、統計的には、木の建物が他の建物より頻繁に火災に遭っているということは特にありません。

火災の特性について知識を持つことは重要です。

火災発生件数として、木造が特に多いというわけではありません。

報道などの影響により木造の火災が特に多い印象を受けますが、木造は火災によって壁や床が抜けて燃え広がり、火災の規模が大きくなりがちだからです。鉄筋コンクリート造などの非木造では、火災の規模はあまり大きくなりません。

準耐火構造や耐火構造は、木造でも壁や床が抜けないようにつくるという考え方に基づいています。

大半の火災の原因は、人為的な過失や電気装置などの欠陥です。そのような人のミスや欠陥機器によって発生した火元は、室内にあるモノ、カーテン、壁紙、家具などに移って広がります。これは、どの工法でも同様に起こることです。

 

木の特性は「ゆっくり燃えること」

木の特性は「ゆっくり燃えること」

鉄筋コンクリート造の建物は火災の際、コンクリートは火災で高温になり、中に含まれた水分が水蒸気になり、それがコンクリートを爆破し、鉄筋がむき出しになり、構造強度は弱まります。

その結果、コンクリートの重みにより、建物が一気に崩れ落ちることもあります。

木という物質は、外側から内側へ「ゆっくり」と燃える特性があります。

それは木が燃える際に表面に炭化が起こり、これが酸素の侵入を止め、内部に火が燃え移っていくスピードを緩めます。

つまり、木は炭化することにより、自ら「防火」していることになります。

木造による耐火建築物や準耐火建築物は、火災になっても一定時間以上、崩壊せずに建物を維持することができます。

建物に火がついてからどれだけの時間、木構造が耐えることができるかは、建築計画の内容や消火活動のしやすさ、木材の種類や断面の大きさなどによっても異なります。

木材の燃えにくい特徴を生かした、燃えしろ設計の技術による木造の準耐火建築物などもアイデアとなります。

関連記事:準耐火建築物であれば「燃え代設計」により木造の構造体を現しにできる

近年、大規模木造も続々と登場してきていますが、防火に関する規制も科学的知見に基づいて、より多くの建築物で木を使えるように、建築基準法の改正などが進んでいます。

 

大規模木造で防耐火に配慮した計画する際のポイント

大規模木造で防耐火に配慮した計画する際のポイント

大規模木造を普及させるためには、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と合わせて木造も選択肢に加えてもらう必要があります。

木造建築は、大きく区分すると「耐火建築物」「準耐火建築物」「その他建築物(防火壁)」に分けられます。

木造建築物の防耐火性能については、この3つについて理解する必要があります。

建築基準法に基づく防耐火の規定は多岐にわたり、全体を整理しながら理解しないと、実務にどのように反映させるかが難しい内容となっています。

大規模木造を計画する際には、建築基準法や告示等をじっくり読み込んで理解することが求められます。

防耐火に関する規定や制限が「何のためにあるのか」を理解することがポイントです。

関連記事:大規模木造で知っておくべき建築基準法のポイント

火災には2種類あります。

自分が出す火災「内部火災」と、隣りからのもらい火による「隣家火災」です。

建築基準法では、隣家からの延焼のおそれがある部分については、外壁や軒裏を防火構造や準耐火構造とすることが求められています。

 

建築基準法に基づく防耐火の基本的な考え方は下記です。

・「防火構造」:30分間燃え抜けない

・「準耐火構造」:45分間、1時間燃え抜けない(※75分間、90分間の規定もあり)

・「耐火構造」:1時間以上ずっと燃え抜けない

 

一方、建物内から出火する際には、火災の初期段階では「出火防止」「早期発見」「初期消火」が重要になります。

火災初期の対応ができれば、火が大きく燃え広がらないうちに避難や消火ができます。

「区画」という考え方があります。出火の可能性の高い場所を小さめに区画しておけば、燃え広がるのを遅らせることができます。

建築基準法では、人が亡くならないように、財産がなくならないように、最低限これくらいで建物をつくっておこうということが定められています。

 

木造の防耐火についての法令のポイントは、「防耐火構造制限」「内装制限」「防火区画等」の3つです。

・防耐火構造制限:構造駆体を燃えにくくすること。火災でもなかなか倒れない、延焼しない構造とすること。

・内装制限:火災の初期に内装を伝わり燃え広がっていくのをどう制御するかということ。

・防火区画等:不特定多数の人が使う多層階の建物では特に重要。

 

この他に避難計画などもありますが、これは鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの非木造と考え方は同じです。

「その他建築物」では、柱や梁などの構造駆体に防火規制はありません。2階建て以下の建物では、大抵この手法で建てられます。延べ面積が1000m2を超えると、防火壁を使って区画します。

建築実務者は法令の趣旨をしっかりと受け止めて、万が一火が回った時の対処法までをきちんと考え、建築主や利用者の生命と財産を守る設計に努めることが重要です。

 

大規模木造の実務的課題:耐火建築物と準耐火建築物への対応

大規模木造のコストの考え方(防耐火編)

大規模木造を検討する際に、必ず考えておかなければならないのが「防耐火」です。

鉄骨やコンクリートに比べて燃えやすい木材(木は火に弱いということではない)という材料を使って、法規の基準を満たした火災に強い建築をつくることが求められます。

非住宅の場合は、規模や建築基準法、各種基準により、耐火建築物や準耐火建築物の仕様が求められることが多くなります。このため、防火・耐火のコストをできるだけ上げないように、建築計画を慎重に検討する必要があります。

関連記事:木造でも耐火建築物は可能!大規模木造における耐火建築物まとめ

関連記事:広がる木造準耐火の可能性!大規模木造における準耐火建築物まとめ

大規模木造は防火・耐火の要求の有無によりコストが大きく変わります。

耐火建築物よりも準耐火建築物のほうが、建材や施工の費用を抑えることができ、大幅に建設コストを抑えることができます。

木造の耐火建築物では、木造の構造体に耐火被覆が必要となります。

木造の耐火建築物を現実的に計画し、デザインとコストを両立させるには、「構造躯体の木(柱や梁)を見せること」にこだわらない設計が重要となります。

木造の準耐火建築物のコストと比較して、木造の耐火建築物とすることで最もコストアップとなるのが内壁、外壁、設備工事です。内壁・外壁では、石こうボードや断熱材の費用が増します。

可能な場合は、準耐火建築物で計画できるとコスト面では有利になります。

 

大規模木造のメリット:事業性の高い提案が可能

大規模木造のメリット:事業性の高い提案が可能

木造は減価償却期間が鉄骨造より短く設定されており、建物を所有する事業者にとっては、年間の経費をより多く計上することができ、節税効果を得ることも可能です。

事業用の建築物ではライフサイクルコストが特に重要であり、計画から解体工事までをトータルで考える必要があります。

減価償却期間の短さや解体時のコスト等を考慮した結果、鉄骨造より木造のほうがコストダウンができるということで、木造が選択される場合もあります。

一方で、耐用年数はあくまで税法上で定められた年数でもあり、現代の木造建築ではメンテナンスを適切に行うことで更に長期に使用することも可能です。

美しい木構造による建築物は、企業イメージの向上にも貢献できます。木構造として最適な工法が「耐震構法SE構法」です。

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。SE構法であれば、施設建築で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

関連記事:木造化が必須な時代に!発注者向け大規模木造のメリット解説

 

大規模木造としてSE構法で実現するポイント

大規模木造におけるSE構法の強み:木造非住宅に特化した専門チームが対応

大規模木造実現するためには、SE構法は最適な構法です。構造設計から構造材の材料供給、施工のサポートまでワンストップサービスで提供できるからです。木造(SE構法)で計画するメリットは主に下記です。

 

1.木造耐火建築物の重量アップにSE構法は対応できる(構造躯体の強さ)

木造で耐火建築物で設計する場合、せっこうボード等の使用量がかなり増えることにより建物重量が重くなります。他の木造の工法では耐震性能の確保が難しくなったり、壁や柱が増えることにより設計の自由度が損なわれることがあります。SE構法は立体解析による構造計算と構造躯体の強度が強いことから、木造の耐火建築物にも問題なく対応できます。

関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.SE構法の構造設計(設計の自由度)

SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材の他にトラスや張弦梁を活用することが可能です。

関連記事:SE構法による大開口、大空間、大スパン、木造耐火の事例まとめ

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

木造の良さを理解し、木造での実現が技術的にも可能であることを認識していただいた上で、大規模木造の提案をしていただければと考えております。

木造の長所・短所をふまえ、要求性能とコストに見合った木造建築物の実現は決して難しい話ではありません。

設計者、施工者には、木の材料特性を引き出し、流通する製材を活用して、都市部の建築の木造・木質化の実現が求められています。

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい高層化、木造耐火などを実現することができます。都市部の厳しい敷地条件の中、鉄骨造ではコストや施工に問題がある場合においても、木造(SE構法)が有効な選択肢となります。

 

NCNは構造設計から生産設計(プレカット)までのワンストップサービスが強みです。計画段階からご相談いただくことで、木構造デザインの木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談いただくことで、合理的に設計を進めていただければと考えております。

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

関連:「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

関連:「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

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