木造戸建て住宅を建てるとき、必ず知っておきたいのが「耐震構造」という言葉です。地震に強い家を建てるには、耐震の他にも「免震」「制震」という方法がありますが、それぞれ費用対効果や適した建物が異なります。違いを知ったうえで、地震に強い家を実現しましょう。

耐震構造とは？

耐震構造とは、地震に強い建築物を作るために必要不可欠な考え方です。柱や梁といった構造躯体の強度を高めることで、地震の揺れに「耐える」構造を作ります。

耐震構造・免震構造・制震構造の違い

地震に強い建物を作る方法は「耐震構造・免震構造・制震構造」の3つがあります。

構造躯体の強度を高める耐震構造

耐震構造とは、構造体の強度を高めることで、地震の揺れに耐える構造です。強度を確保する方法はさまざまで、適切に組み合わせながら建物全体を頑丈にします。

揺れが建物に伝わりにくい免震構造

免震構造とは、免震装置によって建物と地盤を切り離し、地震の揺れを建物に伝わりにくくする構造です。大地震でも建物が揺れにくくなるので、建物の損傷だけでなく家具の転倒も減らせます。よく使われる免震装置は、積層ゴム支承・すべり支承・転がり支承の3種類です。

制御装置が揺れを抑える制震構造

耐震構造とは、建物に組み込んだ制振装置（制震ダンパー）が地震エネルギーを吸収し、建物の揺れを抑える構造です。宅の制震装置としては、ゴム・鋼材・オイルの3種類がよく使われます。

木造住宅では「耐震構造」を基本とするべき理由

木造で戸建て住宅を建てるとき、基本となるのは「耐震構造」です。

なぜかというと、木造住宅は建物自体の重量が軽いため。地震で揺らしたとき、重い建物には大きな負荷がかかりますが、木造のような軽い建物には小さな負荷しかかかりません

そのためコストをかけて制震や免震などの技術を取り入れる前に、しっかりと地盤に建物を固定する方が効率がよいのです。

超高層ビルには「免震装置」が設置される理由

一方、超高層ビルやタワーマンションのような重量のある建物の場合、耐震構造にプラスして免震装置がよく用いられます。

なぜなら、地震で揺れたときに慣性の力が働き、大きなエネルギーが発生するからです。免震装置は耐震構造や制震装置に比べて高コストですが、慣性エネルギーを減らして被害を小さくすることができます。

長い・硬い建物には「制震装置」が有効な理由

そして制震装置は、長い建物や硬い建物に対して効果が高いと考えられています。ビルやマンションは高さがあり、鉄筋コンクリート造で硬さもあるため、制震装置が採用されていることが多いです。

建物には固有周期（固有の揺れやすい周期）があり、地震の固有周期と一致すると共振して建物の揺れが増幅します。例えば10階建てのビルに震度6程度の揺れが加わった場合、3階のあたりが共振ポイントです。制震装置で固有周期を変えることで、一箇所に負荷が集中して壊れるのを防ぐことができます。

木造住宅に「免震装置」や「制震装置」は必要ない？

木造の戸建て住宅を建てる場合、免震装置や制震装置は、非常に限定的な効果しか得ることができません。

免震装置は重量がある場合に効果的ですが、木造住宅のような軽い建物では効果を得にくいからです。

そして、制震装置は高さのある建物に有効ですが、木造住宅は1〜3階建て程度ととても低いため、制震効果も得にくいです。また、鉄筋コンクリート造の建物は硬さがありますが、木造は柳のようにしなる素材なので制震装置によって固有周期を一致させるのが難しいと言われています。

そのため、木造住宅を建てる際には、耐震構造がおすすめ。コスト等に余裕があれば、他の技術も検討するとよいでしょう。

耐震構造のメリット・デメリット

耐震・免震・制震の違いがわかったところで、耐震構造のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット

耐震構造は日本で最もポピュラーな地震対策で、あらゆる業者が施工できます。地盤や立地の影響を受けにくく、日本全国さまざまな場所で建設が可能です。

また、免震や制震に比べて、圧倒的にコストを抑えられるのも耐震構造のメリットです。耐震等級を上げることで、税制優遇や地震保険の割引が受けられるなどの恩恵もあります。

デメリット

耐震性能にこだわると、一般住宅に比べて建築費がかかるのがデメリットです。構造計算をするコストや、強度の高い部材を使うコストなどがかかります。具体的には、構造計算や建築コストとしてトータルで100〜150万円程度かかることが多いでしょう。

この経費をかけるべきか否か迷う方もいるかもしれませんが、構造体は後から簡単に変えられません。また、万が一大地震で自宅が被害を受けると、100〜150万円では足りないくらい莫大な修繕費がかかることもあります。家族の安心と安全を守る必要経費としてかけておくのがおすすめです。

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耐震構造を実現すると間取りに制約が出る？

一般的な木造住宅で耐震性能を向上させるには、筋交いや耐力壁を増やさなければなりません。大きな窓や吹き抜けなど開放的な空間を作るのが難しく、「耐震性と間取りのどちらを優先するか？」の二者択一になってしまうケースもあります。

しかし可能であれば、耐震性も確保しながら、自由な間取りも諦めたくはありません。そこでおすすめしたいのが、マンションで使われることの多い「ラーメン構造」を応用した「SE構法」による木造住宅です。

SE構法と在来工法の木造住宅の違い

一般的な木造住宅の建て方は「在来工法」といって、柱や梁を「ピン接合」する方法です。ピン接合は一体化させずに部材を留める方法なので、地震のように外から大きな力が加わったときに変形しやすい特徴があります。そのため在来工法で耐震構造を実現するには、柱と柱の間に「筋交い」という斜め材を入れて変形を防がなければなりません。ところが、地震に強い家を作ろうと思って筋交いを増やせば増やすほど、大空間や大きな窓を作るのを邪魔してしまいます。

一方、新しい木造住宅の建て方である「SE構法」では、柱や梁を「剛接合」します。柱や梁などの部材同士が強固に一体化するため、筋交いを入れなくても変形しにくい構造体を作れるのが特徴です。斜めの部材に邪魔されることがなく、広々とした空間や大きな窓のある開放的な住まいを設計することができます。

SE構法は全棟で構造計算を実施している

SE構法が地震に強いもう一つの秘密が、すべての住宅で構造計算を実施していること。

家を建てるのに構造計算をするのは当たり前だと認識している方も多いですが、実は在来工法の木造住宅では大半が構造計算をされていません。小規模な木造住宅では構造計算が義務化されていないため、簡易的に「耐力壁の量は足りているか？」などをチェックするのみで建てられているのです。

たしかに壁量計算などの仕様規定をクリアすれば法律的には問題ありませんが、安全度としては疑問が残るところ。実際に壁量計算をクリアした建物について、改めて構造計算をしてみると、必要な耐震性能の6〜7割程度しかないという住宅も少なくありません。

ただし、構造計算を実施するには、手間やコストがかかります。対応できる人材がおらず、構造計算を実施できない工務店も少なくありません。

SE構法で建築できるのは、専門資格を持つ「SE構法登録工務店」のみ。専門の設計士が、基礎から上部構造まですべて構造計算を実施します。

木造住宅は耐震構造で安心な暮らしを叶えよう

地震に強い家を叶えるには、耐震構造・免震構造・制震構造とさまざまな方法があります。木造戸建ては、大規模な高層ビルなどとは違って建物の重量が軽いため、免震や制震ではなく耐震構造で地震対策をすることが重要です。

SE構法で建てられた建築物は、現在まで地震による倒壊・半壊がゼロ。構造計算や耐震シミュレーションを用いて、安心できる耐震構造を実現します。