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地震と住宅の新常識
建築物のFEM解析(有限要素法)とは?木造住宅の構造計算について深く知るのインデックス
建物の安全性を確保するには、想定される外力に対して、各部材にどのような応力が生じているかを確認しなければなりません。非常に複雑な計算となるため、現在ではコンピュータを使った計算が主流です。内容を詳しく理解していなくても応力計算ができる時代にはなりましたが、その結果が正しいかどうか、それに対してどのような設計をするべきかを考えるには、基本的な計算方法を理解しておくとよいでしょう。今回は「FEM解析(有限要素法)」とは何か、また他の計算方法との違いや、住宅の構造計算について詳しく解説します。
FEM解析とは、有限要素法(Finite Element Method)の略称です。複雑な形状や構造を小さな要素(有限要素)へ分割し、各要素について立てた方程式を組み合わせて解くことで、全体の挙動を近似的に計算します。小さな要素へ切り分けることで一つひとつの計算は単純化でき、その計算の繰り返しで複雑な形状のものでも全体の挙動が確認できるのが特徴です。
FEM解析が使われるシーンは、建築物の構造解析だけではありません。熱伝導解析や流体力学、電磁場解析など、さまざまな分野における数値解析手法の一つとして使われています。実験が難しいときに挙動を予測したり、製品設計を最適化させたりするのに便利です。
注意しなければならないのが、FEM解析の結果はあくまでも「近似解」であるということ。ただし、計算量を増やすことで精度を高め、真の解に限りなく近づけていくことは可能です。計算量を増やすほど解析時間は増えるため、一定性能を持ったコンピュータが使われます。
建物の構造解析には現在ではコンピュータを使うのが主流ですが、コンピュータがない時代は手計算で行われていました。さまざまな計算方法があるので、どのような方法なのか理解しておきましょう。
基本的な構造計算の手法が、たわみ角法です。部材の端部に生じるモーメントと変形角から、各部材に生じる応力を計算します。正確に応力が計算できるメリットはあるものの、建物の規模が大きくなると方程式が増えるため、手計算では膨大な時間がかかるのがデメリットです。そのため、以下に紹介する固定モーメント法やD値法という簡易的な計算方法が開発されました。
大きな構造物でも計算しやすくするために開発されたのが、固定モーメント法です。仮想的な固定支点を設けて、それぞれに作用する固定端モーメントを未知数として扱い、構造物の力の釣り合いを考えながら方程式を立てて求めます。精密な計算ではありませんが、一般的な構造の設計としては十分な精度です。手計算でも扱いやすいので、コンピュータがない時代、鉛直荷重による応力を計算するときによく用いられました。
D値法は、水平方向の応力計算に適した方法です。水平荷重を柱や梁の剛性に応じて分配することで、簡易的に方程式を立て、せん断力や曲げモーメントを算出します。コンピュータがない時代には、長期応力は固定モーメント法、地震時の応力はD値法が定番として用いられていました。
固定モーメント法やD値法は、手作業による構造計算の時間を短縮するために開発された方法です。しかし、いくら簡易的な計算とはいえ、大規模な構造物では構造計算に何日もかかるようなことも珍しくありません。そのため、現在ではコンピュータを使った剛性マトリックス法による計算が主流となっています。
剛性マトリックス法は、構造物を線材の組み合わせとして考え、行列を使って解析する手法です。部材ごとの剛性マトリックスから全体剛性マトリックスをつくり、外力と釣り合わせて行列を解きます。
今回のメインテーマとなる「FEM解析(有限要素法)」も、剛性マトリックス法の一種。建築物の挙動や部材の性能などをより詳細に検討できるのがメリットです。
ここまで構造計算について詳しく紹介してきましたが、実は日本で建てられているほとんどの木造住宅のほとんどで構造計算は行われていません。地震大国であり、物づくりを得意とする日本。最先端の耐震性を持っているのかと思いきや、構造計算すら行われていないというのには驚く方も多いのではないでしょうか。
なぜ構造計算が行われないかというと、法律で義務化されていないため。一定規模より小さな木造住宅では構造計算が免除され、「仕様規定」さえ満たせば建築できるというルールになっているのです。
仕様規定は、簡易計算や細かい仕様ルールで構成されています。よく知られているのが「壁量計算」で、耐力壁が足りているのかどうかを確認する計算方法です。その他には、部材の寸法、接合方法、基礎の仕様などの規定が設けられています。これらの各項目が基準を満たしていれば、構造計算を省略できるのです。
法律で義務化されていないのであれば、構造計算は行わずに仕様規定さえ満たしていれば良いのではないか。そう思われるかもしれません。
たしかに一般的なサイズの木造住宅で構造計算をすれば、1棟あたり20万円程度の費用がかかります。人材も手間も必要なため、できれば実施したくないと思っている住宅会社も少なくないでしょう。
しかし、本当にそれで良いのでしょうか。仕様規定では、地震などの力が加わったとき、各部材にどのような力が働いており、各部材が本当にその力に耐えられるのか、科学的に検討されているわけではありません。「この程度であれば、おそらく大丈夫」という経験則に従った安全確保でしかないのです。
実際に仕様規定をクリアして建てられた住宅に構造計算をしてみると、十分な安全性が確保できていなかったというケースも珍しくありません。
構造計算では各部材に発生する応力を計算し、各部材がその力に耐えられるように科学根拠に基づいた設計をします。建築物のような大きく複雑な物体の挙動を検証するには膨大な計算量が必要ですが、コンピュータによるFEM解析を用いれば、手計算よりもはるかに短い時間で詳細な解析が可能です。地震大国日本において、科学的に耐震性の高さが証明された住宅を、現実的なコストで手に入れられる方法として、一つの強力な武器といえるのではないでしょうか。
SE構法ではこのFEM解析を用いて、建物のみならず基礎までを構造計算しています。これまでの木造住宅における基礎の構造計算では、基礎梁と耐圧版それぞれにかかる建物の負荷を別々に計算していました。しかし、耐震構法SE構法では、大規模物件同様の計算手法を取り入れ、基礎梁と耐圧版とを合わせて立体的に計算しています。
木造住宅の建物部分は木造ですが、基礎は鉄筋コンクリートでできています。鉄筋コンクリート造の建物では構造計算(許容応力度計算)が義務付けられていますが、木造住宅の基礎は鉄筋コンクリートでできているにも関わらず、構造計算が免除されてきました。
そのため、ほとんどの木造住宅の基礎は、簡易的な配筋計画のみで設計されているのが現状です。基礎のサイズや鉄筋の太さ、ピッチなどの最低基準が決まっているのみなので、基礎の断面形状は同じものが使い回しされることも少なくありません。
本来であれば、住宅を支える基礎は、地盤の強さを考えながら厳密に設計されるべきもの。そこでSE構法の木造住宅では、地盤調査に基づきFEM解析を行い、建物に伝わる力を解析し、地盤に対して適切な基礎を設計しています。
以前はSE構法でも他の木造住宅の基礎の構造計算と同じように、基礎梁と耐圧版にかかる負荷を別々に計算する方法がとられてきました。しかし、SE構法では大規模物件と同様の計算手法により、基礎梁と耐圧版を合わせた立体的な計算が可能に。基礎梁と耐圧版が同時に負荷を受け、立体的に力を逃がせるようになりました。
その結果として実現したのが、基礎のコストダウン。基礎梁の局所的な負荷を緩和させるためのハンチがないフラットな形状となることで、作業の簡易化、工期短縮による大幅なコストダウンを実現できました。
また、簡易的な壁量計算のみの在来工法で耐震性を向上させようとすると、とにかく筋交いの入った耐力壁を増やさなければなりません。すると、大空間が難しく細切れな部屋ができてしまったり、大きな窓を作るのが難しくなってしまうこともあります。
構造計算で建てるSE構法の住宅が得意とするのは、耐震性を確保しながら自由度の高い間取りを実現すること。大空間・吹き抜け・大開口・オーバーハング・ビルトインガレージ・スキップフロアなど、従来の住宅建築では難易度の高かった間取りも実現できます。
最近は建物の構造計算をする会社は少しずつ増えてきたものの、基礎から構造計算している会社はほとんどありません。基礎は建物ができると見えなくなる部分でもあるため、見える部分に比べて軽視されていることも否定できないでしょう。
しかし、大地震が起きたとき、建物自体の強さだけでなく基礎の強さも揃っているということが非常に大切です。家族の命を守り、その後も安心して住み続けられる家を建てることが、本当に価値のある家づくりといえるのではないでしょうか。大きな予算をかけて作るマイホームだからこそ、美観や省エネ性だけでなく地震にもしっかりと耐えられるように各部を検討しましょう。
SE構法は、木造住宅の構造技術です。丈夫な材料とラーメン構法による強い構造躯体と、一棟一棟に対する基礎から上部までの厳密な構造計算を行う点が最大の特長です。私たちの特長を是非ご覧ください。
株式会社エヌ・シー・エヌが開発した構法で、集成材とSE金物による堅牢な構造媒体を持ちすべての建造物に対してひとつひとつ構造計算(許容応力度等計算)を行うことで、
を同時に実現できる構法です。
(施工は全国の登録工務店でしか行うことができません。)