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SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」

  • SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」 -

幼児施設を計画する際に、空間の快適さや建設コスト、工期等の対策として、鉄骨造から木造へ工法を変更する建築物が増えています。また、伐採期を迎えた日本の森林の活用が求められており、公共建築物木材利用促進法の施行や建築基準法の改正など木造化を促進する動きが活発です。木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建築や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる幼児施設を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。このコラムでは木造の構造躯体にSE構法を採用した認定こども園の事例紹介をしながら、意匠計画やSE構法の構造設計等のポイントについてお伝えします。

 

<このコラムでわかること>

SE構法認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の概要

SE構法認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の意匠設計の特徴

SE構法認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」構造設計の特徴

SE構法認定こども園などの幼児施設に適している理由

大規模木造として認定こども園SE構法で実現するポイント

・まとめ

 

SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の概要

「愛知医療学院短期大学付属ゆうあいこども園」は、愛知県清須市に建つ学校法人佑愛学園が運営する幼保連携型認定こども園です。

この認定こども園は、同じ法人が運営する大学やクリニック・デイケアセンターと隣接した敷地に建っています。高齢者、学生、子供の3世代が、「日常生活の中で交流する場をつくる」という理念をもとに、各施設が学生の実習の場にもなっています。

 

<「愛知医療学院短期大学付属ゆうあいこども園」の概要>

・用途:幼保連携型認定こども園

・構造:木造(SE構法)

・階数:平屋

・延床面積:1,283.68㎡

・定員:135人(保育園120人、幼稚園15人)

 

敷地周辺は、埋蔵文化財包蔵地に指定されています。河川も近く、特定河川法による雨水流出抑制が義務付けられています。通常の施設設計に加えて、地盤改良や雨水貯留への対策が求められました。木造で計画することで、建物の重量を鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して大幅に軽くでき、基礎断面も小さくできることが大きなメリットとなりました。

認定こども園の認定基準を満たすためには、「就学前の子供に幼児教育・保育を提供する機能」と「地域における子育て支援を行う機能」の2つの機能が求められます。

幼保連携型の認定こども園は、幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設として機能を果たす施設です。

幼保連携型の認定こども園の設計を行う場合、幼稚園・保育所の基準を同時に満たす必要があります。建築基準法以外の基準として、幼稚園には「幼稚園設置基準」、保育所の基準は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」があります。

関連記事:木造で幼稚園を計画するための関連法規まとめ

関連記事:木造で保育所を計画するための関連法規まとめ

 

認定こども園を木造で計画するポイントは、耐火要件や建設コスト、工期等をふまえると「準耐火建築物」として建設することです。そのためには「保育室、遊戯室は1階」に計画することとがポイントです。

関連記事:認定こども園を木造で計画するポイントは「保育室は1階」と「可変性の高い空間」

 

幼保連携型認定こども園の場合、2階に保育室、遊戯室を設置しなくてはならない計画では、幼稚園設計基準により「耐火建築物」とすることが求められるため、「木造耐火」の仕様を満たす必要があります。木造(SE構法)でも「耐火建築物」の対応は可能です。

関連記事:SE構法、木造耐火の認定こども園の事例紹介「七里ふたばこども園」

 

SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の意匠設計の特徴

SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の意匠設計の特徴

愛知医療学院短期大学付属ゆうあいこども園」は、南側に向かって開かれたU字型の平面となっています。屋根形状を片流れ屋根とした外観デザインです。建物に囲まれるかたちで園庭があります。敷地を有効に活かしたゾーニングと、快適さと使い勝手を両立させたプランニングです。

このU字型の平面形状は、子供たちが園庭に平等に向き合えるかたちに、という発注者側の要望に基づいています。この形状は将来、建物の拡張もしやすいということで決定されています。

意匠設計のポイントは下記です。

・平面計画は、前面道路に面する西側に外部利用も想定した遊戯室と、子育て支援を主用途とする多目的室、エントランスホールを兼ねた園児の送迎スペースを挟んで、中央から東側に向かって職員室、保育室、厨房などが円弧状に並んでいます。

・U字型の平面で職員室や厨房を建物中央部に配置することにより、移動の動線の短さ、視認性の良さ、周遊性が高まるなどのメリットがあります。

・廊下は、厨房からの配膳を考慮して、外部では無く内部化されています。

・遊戯室と多目的室(子育て支援)を一体的に使えるように、両室の仕切りは大きな引き戸で計画されています。

 

SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の構造設計の特徴

SE構法の認定こども園の事例紹介「ゆうあいこども園」の構造設計の特徴

SE構法の構造スペックをうまく活用すると、木造では実現が難しい大空間、大開口などを実現することができます。

SE構法であれば、認定こども園で求められるスパンの大きい空間にも対応できますし、架構をシンプルにすることが可能です。

SE構法は、許容応力度計算に加えて偏心率のバランスを考慮した構造設計を行なっておりますので、外壁(耐力壁)の位置も意匠のデザインに合わせて決定することができます。

SE構法は、独自のSE金物を使用した断面欠損の少ない構造によって柱と梁とを接合し、優れた耐震性能を実現しています。SE構法は表面にネジ切り加工を施した通常のボルトの約2倍の強さを持つSボルトを木材にねじ込み、高強度のSE金物との組み合わせにより、耐震性の高いラーメン構造を実現しています。

今回の認定こども園におけるSE構法の構造設計の主なポイントは下記です。

木造でも平面斜辺やR壁の設計が可能

1.木造でも平面斜辺やR壁の設計が可能

この認定こども園は、建物の奥行きが12,700mmで湾曲し、内側に1,820mm幅の廊下がある平面形状となっています。

SE構法では平面斜辺による平面計画が可能です。敷地形状に合わせて建物の一部の外壁を平面斜辺にできますので、敷地を有効に利用できる設計が可能になります。

SE構法ではR壁による平面計画も可能です。建築デザインにより建物の外壁をR壁にする必要がある場合にも対応できます。SE構法では、構造躯体に一般に流通している構造用集成材を使います。構造用集成材の梁を水平方向にRに製造することは難しいため、木造で実際にR壁を作る場合にはR壁のラインに合わせて「多面体」で構造躯体を施工することが基本となります。

エヌ・シー・エヌ独自の計算ソフト「wolf3」は、立体解析が可能で、今回のような複雑な形状の建築においても建物を一体として構造計算することが可能です。

関連記事:耐震構法SE構法は斜辺やR壁の平面計画に対応可能

 

SE構法の張弦梁で実現した大空間

2.SE構法の張弦梁で実現した大空間

この認定こども園の遊戯室は、12,740mm×13,560mmの矩形平面の大空間に、梁せい500mmの「張弦梁」を架けて、無柱空間を実現しています。束材は150mmの木材、下弦材は16mm×44mmのフラットバーで木材を被覆しています。

張弦梁を用いることで、大スパンで求められる大断面の特注材の梁を使うことなく、大空間を実現することができます。コストも抑えられますし、特注材の製作に要する時間も短縮できます。

単純梁では梁せいが大きくなりすぎる場合、張弦梁は意匠的にも構造的にも有効な選択肢です。

関連記事:耐震構法SE構法では張弦梁を採用して軽快な印象の大空間を実現できる

 

木造(SE構法)で認定こども園で求められる大空間を構成する設計手法としては「トラス」もあります。

関連記事:耐震構法SE構法によるトラスで大空間を実現する

 

SE構法による燃えしろ設計

3.SE構法による燃えしろ設計

燃えしろ設計とは、木製の柱・梁について、火災時に燃えるであろう厚みをあらかじめ構造上必要な断面に付加する手法です。これは燃え進み方が緩慢な木造の性質を工学的に評価したもので、木材による木材の耐火被覆のイメージです。

遊戯室の張弦梁を支える両端の柱は、150mm×360mmの平角柱として、準耐火建築物に対応して「燃えしろ設計」としています。

保育室も梁材は燃えしろ設計で現しとしています。柱材に関しては円弧状平面のため仕上げ材との取り合いを考慮して被覆しています。

関連記事:準耐火建築物であれば「燃え代設計」により木造の構造体を現しにできる

 

SE構法が認定こども園などの幼児施設に適している理由

SE構法認定こども園などの幼児施設に適している理由は下記です。

 

1.工期が短いため補助金事業に対応しやすい

認定こども園を補助金事業で実現するには、「年度内に竣工」するための短工期に対応する必要があり、そのために最も適した工法が「木造」になります。

NCNが提供するSE構法は、一般に流通している構造用集成材を採用している工法のため、原則構造材発注後45〜60日間で構造材を現場に搬入することが可能です。構造躯体の加工も全て提携するプレカット工場で加工後に現場に搬入しますので、工事着工から建て方まで短期間にスムーズに進められます。

関連記事:補助金事業には木造がベスト!木造がRC造やS造より工期短縮できる理由

 

2.耐火建築物・準耐火建築物に対応しやすい

認定こども園を木造で計画する際には、まず耐火要件を確認する必要があります。木造は耐火建築物・準耐火建築物・その他建築物と要求される耐火性能によって、意匠性、コスト、工期等に大きく影響してきます。計画の初期段階より、木造の耐火要件を押さえておくことによって、以後の計画をスムーズに進めることが可能です。

認定こども園では、建築基準法や設計基準等により「耐火建築物」とすることが求められることがあります。「木造耐火」の仕様を満たす必要がありますが、木造(SE構法)でも「耐火建築物」の対応は可能です。

関連記事:木造で耐火建築物を実現するために必須な大臣認定とは?

関連記事:木造の耐火建築物は「木を見せる」にこだわらず大臣認定工法や告示を使うべき理由

認定こども園のように低層の建築は、計画内容を整理し、可能ならば準耐火建築物の仕様で設計することができると、耐火建築物と比較してコストパフォーマンスの高い木造建築が実現できます。

関連記事:木造の準耐火建築物の可能性が広がる!改正建築基準法の解説

 

3.木造建築は人や環境に優しい

木の温かみ、香りは人の気分を和らげてくれる沈静作用があります。木はやすらぎと心地よさをもたらしてくれる優しい材料です。

教育施設の調査において木材利用は、子ども達のストレス緩和、集中力の向上、インフルエンザや怪我の抑制効果などの報告があり、木造の建物は健康にも優しい建築物です。

関連記事:中大規模木造は人や環境に優しい理由

 

大規模木造として認定こども園をSE構法で実現するポイント

大規模木造として認定こども園をSE構法で実現するポイント

認定こども園を木造(SE構法)で計画する場合のポイントは下記です。

1.低層建築における木造の優位性

木造の持つ規格化、標準化された設計・施工技術は、多様な建物や空間を低コストで実現することができます。特に、高品質で低コスト、短工期が求められる施設等を、確実に設計・施工するために有効な工法が「システム化された木造」であるSE構法です。

関連記事:「店舗、事務所、倉庫には鉄骨造より木造が「安い、早い、うまい」理由」

 

2.コストの優位性(鉄骨造と木造の比較)

構造で木造(SE構法)を選択することで、基礎や構造躯体のコストが安くなります。外壁仕上げには住宅用サイディング、窓は住宅用アルミサッシなどを使うことで、建材費や施工費も抑えることができます。

関連記事:「中大規模木造の建設費の概要とコストを抑えるポイント」

 

3.木造でよりコストパフォーマンスを高める(木造の構法による比較)

大規模木造の計画において、木造建築を慣れていないと過大にコストや工期が膨らんでしまうことがあります。それを避けるためには、構造躯体は一般用流通材を使うことを前提に構造計画を行うことが基本です。

関連記事:「中大規模木造でコストダウンできる構造計画、構造躯体の考え方」

 

4.木造に精通した構造設計者に依頼(SE構法は大規模木造に適している)

SE構法は単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。SE構法は剛性のある木質フレームに囲まれた耐力壁を併用することで、耐力壁の性能を最大限生かすことが可能となり、壁量を少なくできます。SE構法は木造でも明確な構造計算に基づいているので、設計者は安心して意匠設計に集中できます。

関連記事:「中大規模木造に適した技術と自由があるSE構法の構造設計」

 

5.木造におけるワンストップサービス(SE構法は使い勝手が良い)

SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。大規模木造建築では工法に関わらず、「木造の構造躯体の施工の担い手」を確保する必要があります。SE構法であれば、構造躯体の施工だけをSE構法登録施工店に依頼する「建て方施工」という方法もありますので、施工会社選定の選択肢が大きく広がります。

関連記事:「SE構法はワンストップサービスが魅力!各プロセスごとに徹底解説」

 

まとめ

認定こども園のような用途の建築においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、納期短縮、施工性向上を実現することができます。

SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。

計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。

 

集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。

「耐震構法SE構法」へのご相談はこちらです。

 

また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。

「木構造デザイン」へのご相談はこちらです。

 

株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。