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長坂常インタビュー vol.005

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木アングルを使って、家具とも建築ともいえない造作をつくる。

― 建築と家具の間とは、どういうことでしょうか?

長坂  たとえば、建築のスケールはクレーンが届く範囲と考えたら、家具のスケールは人の手が届く範囲になります。簡単に手が届いちゃうのは、建築にならない。もう少し具体的にいうと、たとえば建築の高さが2,500~3,000㎜(天井高)だとすると、家具の高さは2,000㎜くらいまでになります。両者の間には500~1,000㎜のギャップがあって、この部分は手が届かないばかりに上手く計画に取り込まれず「家具と建築の間」に溝が生まれます。建築の下と家具の上にできるこの溝に、家具とも建築ともいえない造作をつくる――そのための木アングルであり、それを受け止める器が「つくる家」のスケルトン(フレーム)になります。

― 木アングルの具体的な使い方を教えてください。

長坂 たとえば、木アングルを梁と梁の間に固定して、それにベニヤを取り付けて棚やロフトをつくることができます。角材を使ってもできることですが、アングルの場合はそれぞれの面に添って取り付けられるので、接合部が美しく仕上がります。金物も不要です。
 ベニヤと角材でいうと、ツーバイフォー工法がある意味セットになって組まれていて、いいプロダクトだと思いますが、それ以外でこれらがセットになっているものをあまり見たことがありません。柱や梁などの角材として存在しているものと、ベニヤをプロがうまく加工してつなげていっています。木アングルは、これを素人でもきれいに仕上がるように手伝うパーツです。
木アングルをつくるにあたって僕らがこだわったのは、先にも触れましたが、ゆっくり時間をかけてでも一人でつくることができること。そして、つくりたくなる、楽しそうなパーツであること。木アングルの存在によって、つくり方に選択肢が増えて、今までできなかったことができるようになったらいいなと思いますし、そのことが新しい木造住宅のあり方につながっていけば幸いです。

シンプルな躯体を買って、後はつくりながら住む。
長坂常さんは、セルフビルドでつくり込んでいく家と、それを助けるパーツ‘木アングル’を提案しています。
住み手が主体的につくる家――そこには、つくりたくなるしくみがありました。

<インタビュー/文:木藤阿由子(建築知識ビルダーズ編集長)>